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脱炭素化に向けた道筋―グリーン・リカバリーに向けた科学者からのメッセージ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大や豪雨などの気象災害が、経済活動や日常生活に甚大な影響を与えています。このまま気温上昇が続けば、さらなる感染症も予想され、今や「生存あっての経済」を前面に押し出す必要さえでてきています。こうした中で、一部の国、地方自治体においては、脱炭素化を念頭においたグリーン・リカバリーがすでに進められています。

欧州委員会は2019年12月に欧州グリーンディールを発表し、すべての政策分野において気候と環境に関する課題をチャンスに変えるという決意のもと、2030年の温室効果ガスの削減目標の引き上げ、必要な法制、投資額や手段など、具体的な行動を示しました。欧州各国も気候変動対策を念頭においたグリーン・リカバリーを実施しています。

このままの温室効果ガス排出量が続けば、早ければ2030年にも地球の平均温度は1.5℃上昇してしまうことから、気候変動への早急な対策が必要とされています。しかし、全世界がコロナ禍に苦しんでいる中、グリーン・リカバリーの名のもとに進める脱炭素化には課題もあります。

IGESは脱炭素に向けた国際的な研究ネットワーク(LCS-RNet)の事務局を務め、過去に開催してきた11回の年次会合で低炭素・脱炭素社会への移行について議論してきました。このセッションでは、温暖化研究を長年リードしてきた研究者と共に、COVID-19と気候変動対策が及ぼす経済・社会的影響(産業のトランジション、雇用、ファイナンスなど)に焦点をあて、現在進行形の危機に適時・適切に対応し、また、長期的視点から社会を再設計していくにあたり科学がどのような役割を果たすべきか議論します。

スピーカー

国立環境研究所 社会環境システム研究センター 室長

発表資料(1.2MB)

増井 利彦

増井 利彦

国立環境研究所 社会環境システム研究センター 室長

国立環境研究所社会環境システム研究センター室長。

1997年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。専門は統合評価モデルAIMの開発とそれを用いた気候変動政策の定量分析。2000年から東京工業大学工学院経営工学系連携教員。中央環境審議会地球環境部会の臨時委員やIPCC第6次評価報告書第3作業部会執筆者(第4章)も務める。

フランス国立科学研究センター名誉研究ディレクター/フランス環境・開発国際センター(CIRED)前ディレクター

発表資料(825KB)

ジャン・シャルル・ウーカード

ジャン・シャルル・ウーカード

フランス国立科学研究センター名誉研究ディレクター/フランス環境・開発国際センター(CIRED)前ディレクター

経済学者、フランス環境・開発国際センター(CIRED)前ディレクター。エネルギーと環境に関する専門家であり、気候変動課題に関心を持った最初の社会科学研究者の一人として、気候変動課題を扱うチームを指揮。経済学や気候変動分野での学術論文多数。フランスの国レベル・国際的なプロセス双方に深く関与しており、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第3作業部会(WGIII)の数次にわたる評価報告書の作成において主執筆者(LA)や統括執筆責任者(CLA)として貢献

ヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所 未来エネルギー・産業システム部 ディレクター

発表資料(414KB)

ステファン・レヒテンボーマー

ステファン・レヒテンボーマー

ヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所 未来エネルギー・産業システム部 ディレクター

ステファン・レヒテンボーマー教授は、ドイツのヴッパータールにあるヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所の未来エネルギー・産業システム部のディレクターであり、また、スウェーデン・ルンド大学にて未来の持続可能なエネルギーに焦点を当てた、環境・エネルギーシステム分野の副教授でもあります。

彼は、ドイツのフレンスブルク大学の国際経営研究所でエネルギーと環境マネジメントの博士号を取得しました。彼は、特に低炭素産業に関する国内及び国際的なエネルギーと気候シナリオ分析の応用研究を行っています。彼は、エネルギー集約型産業とともに、脱炭素シナリオについてのステークホルダー対話プロセスを主導してきました。彼の研究分野には、エネルギーシステム、産業分野のトランジション、エナギーヴェンデ(ドイツのエネルギー転換政策)のデザイン・評価、GHG排出インベントリと排出予測、持続可能な建築と計画、石炭と天然ガスセクターが含まれます。

彼は、GHGインベントリ、政策と対策、GHG排出予測について、UNFCCCによる専門家リストに名前を連ねており、G7環境大臣会合にて提案・立ち上げられた「低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet)の運営委員でもあります。また、彼はノルトライン・ヴェストファーレン州のSCI4climate.NRWを主導しています。これは、炭素中立で競争力のある基礎産業を実現すべく、20社以上の大企業、その他団体、州政府と科学者により設立されたIN4climate.NRWの科学部分です。

イタリア新技術・エネルギー・持続的経済開発機構(ENEA) リサーチディレクター

発表資料(716KB)

ガブリエーレ・ザニーニ

ガブリエーレ・ザニーニ

イタリア新技術・エネルギー・持続的経済開発機構(ENEA) リサーチディレクター

物理学者。イタリア新技術・エネルギー・持続的経済開発機構(ENEA)の持続可能性部門にて、大気汚染・気候変動・水文地質学に関するリスクや、耐震技術を取り扱う85名の研究者・技術者からなるチームを率いる。

イタリアの大気質・温室効果ガスについての政策を支援すべく、統合モデルシステムを開発するプロジェクトを担当。また、さまざまな燃料を動力源とする車両・航空機からの排出ガスの特徴を明らかにすべく複数の実験を調整。これまでの知見の蓄積を踏まえて、いかに大気汚染を削減できるか、研究成果を効果的な政策設計ツールに反映することをライフワークとしている。

英国エネルギー研究センター(UKERC) ディレクター

発表資料(773KB)

ロバート・グロス

ロバート・グロス

英国エネルギー研究センター(UKERC) ディレクター

現在、英国エネルギー研究センター(UKERC)のディレクターであり、インペリアル・カレッジ・ロンドンのエネルギー政策・技術の教授を務める。これまでに、エネルギー政策・技術センター(Centre for Energy Policy and Technology: ICEPT)のディレクター、未来エネルギー研究所(Energy Futures Lab)の政策部門のディレクターを歴任。教育・大学院での研究指導の豊富な経験を有する。

その他、エネルギー研究所(Energy Institute)のフェロー兼カウンシルメンバー、英国エネルギー経済学者協会(British Institute of Energy Economists: BIEE)のカウンシルメンバー・元議長。電力・ガス市場局(Office of Gas and Electricity Markets: Ofgem)のアカデミックアドバイザリーパネルのメンバー(2018年~現在に至る)。イギリスの3つの議会特別委員会(Select Committee)の専門アドバイザーとして、英国の政策立案に広く関与。エネルギー政策、経済学、技術イノベーションについての著書多数。

IGES 研究顧問

甲斐沼 美紀子

甲斐沼 美紀子

IGES 研究顧問

IGES研究顧問。1977年に国立環境研究所(NIES)に入所し、1990年から、全球に加えて、アジア太平洋地域に注目した気候安定化のための政策オプションの検討に用いる、アジア太平洋統合評価モデル(AIM)の開発に取り組む。2009年から2014年まで環境省地球環境研究総合推進費戦略研究「アジア低炭素発展プロジェクト」の研究統括を務め、また、2003年から2014年まで北陸先端科学技術大学院大学の客員教授を務めた。最近では、アジアにおける低炭素社会構築、エネルギーシステム、社会的発展に研究の重点を置いている。また、国際ジャーナルや本で論文を発表してきており、主な著作等として、Climate Policy Assessment (2003)、Methodologies for leapfrogging to low carbon and sustainable development in Asia (2017)、Post-2020 Climate Action: Global and Asian Perspectives (2017)等が挙げられる。 これまでの受賞歴として、環境科学会学術賞(2011年)、科学技術への顕著な貢献2010(ナイスステップな研究者)(2010年)、日経地球環境技術大賞(1994年)等がある。同氏はまた、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次及び第5次評価報告書と、IPCC 1.5℃特別報告書のリードオーサーを務めた。また、国連環境計画の第6次地球環境概況(GEO-6)の統括執筆責任者を務めた。2016年には、フォーブスジャパン「世界で闘う日本の女性55」に選出された。