ISAP2022 全体テーマ
昨年の持続可能なアジア太平洋に関する国際フォーラム(ISAP)では、「未来を導く決定的な10年:気候、生物多様性と他の地球的課題の統合的な解決を目指して」というテーマのもと、国際社会がこれまでとは決定的に異なる10年に向けて大胆な一歩を踏み出すにはどうしたらよいかを議論しました。一年を経てもなお、統合的な解決は大きな課題ですが、今年のISAPでは科学・政策・行動の連関についても取り上げます。
今年のISAPでは、「気候変動と生物多様性のシナジーを強化する:科学から政策、そして行動へ」をメインテーマに選びました。気候変動と生物多様性の損失は、いずれも自然と人間との非持続的な関係の拡大に起因しており、人間社会にとって大きな脅威となっています。また、これら二つの課題は相互に深く関連しており、課題の解決には個々の政策・対策のみならず、社会・経済構造の根本的な変革が不可欠です。今回14回目を迎えるISAPでは、これら二つの地球的課題に対して、いかにより統合的にアプローチできるかを議論します。統合的なアプローチは、ウクライナにおける戦争に端を発する国際政治情勢の大きな変化の中で、人間の安全保障という観点にも繋がります。今直面している課題が、これからの地球環境政策に及ぼす影響と、それを克服するためのあるべき方向性についても議論します。
気候変動と生物多様性の統合を強めていくにはまだ道半ばです。気候変動と生物多様性をめぐる研究・政策コミュニティは拡大しつつありますが、これまで往々にしてそれぞれの専門分野にこもりがちでした。これら二つのコミュニティが協力を強めることで、気候変動と生物多様性の統合的な解決策を同定することにつながります。また、そうすることで、これまであまり議論されてこなかったトレードオフにも目を向け、バランスをとっていくことにも役立ちます。
国際的な研究コミュニティ及び政策コミュニティにおいても、気候変動と生物多様性に対する相互の関心が高まっています。本年11月に開催予定の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第27回締約国会議(COP27)での交渉は、生物多様性への含意を持つと考えられます。また、年末に開催予定の生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議(COP15)で採択予定の「ポスト2020生物多様性枠組(GBF)」は、生物多様性の脅威を削減する要素の一つとして気候変動への対応を挙げています。加えて、「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)」と「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の連携強化にあたっても、これら二つの地球規模の課題について、いかに統合的にアプローチしていくかの議論が進みつつあります。
こうした努力は、気候変動と生物多様性に関する国際的な研究や政策統合の強化につながると考えられ、大変心強いものです。しかしながら、これらの議論が高次元でなされ、またあまりにも概念的であるがゆえに、現場の意思決定者に響かないというリスクもあります。その結果、国際的な科学と政策の進展が、具体的な行動に結びつかない懸念もあります。
そのため、ISAP2022では、気候変動と生物多様性について、またこれら地球的規模の課題の統合的な解決策についての議論を進めていくのみならず、どうすれば科学、政策、行動の間のインターフェースを強めていけるのかを議論します。そして、「決定的な10年」において、未来に向けてできるだけ多くの選択肢を確保できるよう、また、将来にわたって安定した気候のもとで豊かな自然の恵みを享受し続けられるよう、多種多様なセッションを構成して議論を深めます。