ISAP2026 キービジュアル

コンセプトノート

危機を乗り越える地域力:複数課題の同時解決を世界へ

地球のトリプル・クライシス―気候変動、生物多様性の損失、汚染―は、もはや抽象的な概念ではなく、実際に世界の多くの人々が感じる日常の一部となってきています。これらの危機は、ウクライナやイランにおける戦争が世界の平和と繁栄を脅かすことで生じる影響によって、さらに複雑化しています。日本の地方もその影響から免れることはできず、気候変動がもたらす環境リスクへの対応とともに、物価上昇といった経済リスクの軽減など、多面的なレジリエンスが試されています。

厳しい状況の中、複雑な問題群を迅速かつ効率的に解決していくには、縦割りの対応から脱却を図り、相乗効果を生み出すように施策を戦略的にデザインし、関係者間の連携を図る「シナジーアプローチ」を進めることが重要です。例としては、再生可能エネルギーへの投資が、化石燃料への依存度を低減し、エネルギー安全保障を強化し、地域社会に雇用を創出することなどが挙げられます。

こうした「シナジーアプローチ」の推進は、近年、グローバルな潮流となっており、具体的な実践が進んでいます。国際的なレベルでは、2019年以降、国連経済社会局(UNDESA)と国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局がシナジー強化のための取り組みを推進しており、「気候変動とSDGのシナジーに関するグローバル報告書」を2023年から毎年発行しています。地域的なレベルでは、7月1日から3日に行われる国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)環境と開発委員会において、アジア太平洋版の「シナジー報告書」が発表される予定です。IGESも作成に深く関わるこの報告書では、日本を含むアジア太平洋地域から集められた30を超えるシナジーの優良事例が紹介される見込みです。持続可能な社会への移行を実現する鍵は、こうした経験から得られた教訓を共有・活用し、「シナジー」をアジア太平洋地域全体の政策や行動の中核的な原則とすることができるかにあります。

今年で第18回を迎える「持続可能なアジア太平洋に関する国際フォーラム(ISAP)」は、初の兵庫県開催となります。国際展開が進むシナジーの強化・推進が、日本で、そして関西などの地方レベルでどのように社会実装されうるかについて議論を進めます。さらに、ローカルに行われている課題解決の相乗的な取り組みを、地域・国際レベルにスケールアップしていくにはどのような仕掛けや手法が必要なのかを検討します。そのうえで、各分野のステークホルダーである皆様と、個々の行動の総和を超える協調的成果を生み出し、「シナジー」の輪を広げていくための道筋や力点(レバー)について考えたいと思います。