未来を導く決定的な10年: 気候、生物多様性と他の地球的課題の統合的な解決を目指して

2015年に国際社会が持続可能な開発目標(SDGs)に合意したとき、各国が地球と地球上の人々を守るために必要なトランスフォーマティブ・チェンジ(社会変革)を受け入れることへの期待が高まりました。ところが残念ながら、それは実現していません。それどころか、世界がSDGsを達成するのは、もともと計画された2030年ではなく2070年代になるのではないか、いや、それよりもっと遅れるのではないかとの指摘もあります。これらの予測は、今から2030年までの間、喫緊の課題として、SDGsの進展を加速化すべきだと警告しています。実際、世界はいわゆる「未来を導く決定的な10年」に入っています。

今回の持続可能なアジア太平洋に関する国際フォーラム(ISAP)では、国際社会がこれまでとは決定的に異なる10年に向けて大胆な一歩を踏み出すにはどうしたらよいか、その方法を追求します。さまざまな国の意思決定者、また、それぞれの意思決定のレベルにおいて、SDGsのもと、生物多様性と気候変動という二つの大きな課題に対して、より統合されたアプローチをとるにはどうすべきでしょうか。コロナ禍に見舞われながらも、世界の意思決定者の多くは生物多様性と気候変動に取り組むというコミットメントを示しています。これを機に、より広範に持続可能性アジェンダを進めていかなくてはなりません。

コミットメントが高まっている理由の一つに、国際協定の進展が挙げられます。生物多様性条約(CBD)の締約国は、2050年までに「自然との共生」を実現するとのCBDのビジョンに向けて、ゴール、ターゲット、及びマイルストーンを含む「ポスト2020生物多様性枠組」を起草しました。この枠組は、生物多様性条約第15回締約国会議にて採択される予定であり、国家レベルでの行動を導くことを目的としています。さらに、2021年から2030年は、「国連生態系回復の10年(UN Decade on Ecosystem Restoration)」にあたります。この国連の10年は、劣化あるいは破壊された生態系の回復をさらに促進することを目指していますが、単に自然のためというわけではなく、自然が貧困撲滅や気候変動への効果ある対策として人類のためにも重要な役割を果たしていることに依ります。

気候交渉は、「慎重な楽観論」すなわち、うまく進展するだろうと期待されつつも、予断を許さない状況にあります。新型コロナウイルスの感染拡大による1年間の延期を経て、10月31日から11月12日まで、国連気候変動枠組条約の第26回締約国会議(UNFCCC-COP26)が、英国・グラスゴーで開催されます。この1年間、国際社会は気候変動対策に関するオンライン会議やその他の創造的な手段を駆使してモメンタムの維持に努めてきました。例えば、昨年12月に開催された「気候野心サミット」では、45か国がパリ協定に基づく国別削減目標(NDC)を強化し、24か国がカーボンニュートラルへの取り組みを表明しました。 さらに、いくつかの国は、パリ協定で設定された目標年よりも早くカーボンニュートラルに移行すると宣言しました。NDCを更新し、野心的な目標を強化するこれらの動きは、COP26に向けて続いていくと考えられます。

さらに、昨年から日本国内でも、いくつかの注目すべき変化がありました。2020年10月、菅義偉前内閣総理大臣は「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました。また、今年4月には日本の2030年削減目標が2013年比26%から46%へと、2050年カーボンニュートラルに向けてより踏み込んだ数字に引き上げられました。

進展の兆しには勇気付けられますが、気候変動と生物多様性の損失という二つの課題を、最も持続可能に解決していこうとするのなら、この二つの課題自体もさることながら、これらが他のSDGsとも相互に関係しているとの意識をもって行動することが求められます。この10年が明確なターニングポイント、すなわち正念場であるとすれば、政府機関、民間部門、市民社会、科学者、そして一般市民それぞれにとって、生物多様性と気候変動をより統合した形での対応が不可欠です。今回のISAPは様々な切り口から、こうした統合的な解決策を考える機会を提供します。

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