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全体会合 1(PL-1)
  • 2024年7月23日
  • 9:30 - 10:40
  • 同時通訳あり

2050年ネット・ゼロの達成に向けた質の高い炭素市場の構築と実践

要約

本会合では、2050 年までにネット・ゼロを達成する上で、質の高い炭素市場が果たす重要な役割に焦点を当てました。ダーク・フォリスター氏は、国際的な炭素市場の概要を説明し、現在までにコンプライアンス市場が大幅に成長し、世界の排出量の 23% をカバーしていることに触れました。この範囲を 2030 年までに 60% に拡大することが目標となっており、そのためには、自主的な炭素市場を通じて途上国に投資を誘導し、それによって世界の気候対策を強化する重要性を強調しました。

パネルディスカッションでは、パリ協定第 6 条の技術的側面を最終決定する際の課題と機会について議論しました。エルチン・アラベルディエフ氏は、特に途上国で野心的な気候対策を促進する可能性のある第 6 条を運用するには、国際協力が重要であり、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第29回締約国会議(COP29)において、第6条に関する技術的な議論を完了させる必要があることを述べました。クリス・シップリー氏は、炭素市場における透明性と強固な基準の必要性について述べました。G7 が昨年発表した質の高い炭素市場の原則に記載されているように、明確かつ一貫性のある基準が市場の健全性を維持する上で大きな役割を果たす中、自主的な炭素市場とコンプライアンス市場を連携させることが重要であると述べました。プティパ・ロッキッティックン氏は、第6条を国内クレジットメカニズムに統合させているタイの事例を紹介しました。大気汚染を削減するために電動バスを導入するパイロット 事業を実施しており、炭素市場が適切に設計されれば環境上の利点が大きくなることを述べました。山﨑政明氏は、自助努力としてのネット・ゼロを柱としながら、国内のJ-クレジットを活用している日本企業の現状を説明しました。ネット・ゼロに取り組む企業には個性があり、企業に合ったストーリー性が必要となっている中、グリーンウォッシュを恐れて情報開示を躊躇するといったことにならぬよう、透明性の高さが企業の評判の高さにつながることが重要であると述べました。そして、企業自身が国際的な基準を学ぶことも必要となっていると述べました。アントン・ツヴェトフ氏は、高品質の炭素クレジットを認証するためのコアカーボン原則について説明しました。そして、市場の健全性と透明性にかかる原則に沿うことは、特に途上国でステークホルダー(利害関係者)間の信頼を構築し、投資を誘致するために不可欠となっていると報告しました。リディア・シェルドレイク氏は、自主的炭素市場の需要側に焦点を当て、正しく炭素市場を利活用していることを示す「炭素十全性主張」の実務を紹介しました。これは、企業が信頼できる炭素クレジットを使っていることを主張するための標準的なプロセスを提示し、企業の行動がより広範な環境目標と合致していることを示すものです。ディスカッションでは、以上に加えて、自主的炭素市場とコンプライアンス市場の間の調和的アプローチの必要性や、民間セクターの関与が果たす役割、また、炭素市場の質を確保するための透明性のある基準と政策についても議論を行いました。

主要メッセージ
  • パリ協定の排出削減目標達成に向けて、2030 年までにコンプライアンス市場の範囲を 60% に拡大するという野心的な目標を強調した。コンプライアンス市場の範囲を広げることで、国や業界は炭素排出量のより適切な規制および削減を行い、世界の気候目標への貢献が可能となる。
  • 信頼された、質の高い炭素市場を確立するには、厳格な基準を遵守し、優れた慣行を奨励することが不可欠である。高い十全性は、炭素クレジットが排出削減量を真に反映していることを保証することで、企業、政府、投資家などのステークホルダー間の信頼を育み、長期的には市場の拡大と持続可能性につながる。
  • パリ協定第 6 条は、炭素市場における国際協力を可能にする重要なメカニズムである。第6条は、排出削減枠を各国間で移転することを可能にし、排出削減能力が異なる国々にとって特に有益となる。標準化された透明性のある慣行を促進することで、第 6 条は民間部門の潜在能力を引き出し、二国間または多国間の協力を奨励し、最終的には自主的な炭素市場の有効性を高めることを可能とする。国際協力は、市場メカニズムがネット・ゼロ排出という全体的な目標達成に効果的かつ確実に貢献するために不可欠である。

基調講演
「国際的な炭素市場の現状と企業の取り組み」

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ダーク・フォリスター 国際排出量取引協会(IETA) 会長

パネル討論
「2050年ネットゼロの達成に向けた質の高い炭素市場の構築と実践」

モデレーター
小圷 一久 IGES 気候変動とエネルギー領域 パリ協定6条実施パートナーシップ センター長
パネリスト
エルチン・アラベルディエフ  COP29議長国(アゼルバイジャン共和国)気候変動緩和チーム長 / シニア交渉官
パネリスト
クリス・シップリー  英国エネルギー保障ネットゼロ局 グローバル炭素市場担当チーム長
パネリスト
プティパ・ロッキッティックン  タイ温室効果ガス機構(Thai Greenhouse-gas Organization) 炭素クレジット認証部長
パネリスト
山﨑 政明  株式会社野村総合研究所 常務執行役員(本社機構・サステナビリティ推進担当)
パネリスト
リディア・シェルドレイク  自主的炭素市場イニシアティブ(Voluntary Carbon Market Initiative) 政策・パートナーシップ部長
パネリスト
アントン・ツヴェトフ  自主的炭素市場の十全性協議会(Integrity Council for Voluntary Carbon Market) 政策担当副部長 [オンライン参加]
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