気候変動問題は、国際社会が一体となって直ちに取り組むべき重要な課題です。国際社会では、1992年に採択された国連気候変動枠組条約(UNFCCC)に基づき、1995年より毎年、UNFCCCの締約国会議(COP)が開催され、世界での実効的な温室効果ガス排出削減の実現に向けて、精力的な議論が行われてきました。
このような中、2015年12月、フランスのパリで開催されたCOP21においては、2020年以降の温室効果ガス排出削減などのための新たな国際的枠組みとして、パリ協定が採択されました。
このパリ協定では、途上国を含む全ての参加国と地域に、2020年以降の「温室効果ガス削減・抑制目標」を定めることを求めています。加えて、長期的な「低排出発展戦略」を作成し、提出するよう努力すべきであることも規定されています。
こうした背景よりネット・ゼロ(気候中立社会)の実現が望まれています。進展はみられるものの、一方で各国の抱える課題や制約が異なっているため、実現が難しい状況にあります。また、ネット・ゼロ実現のためには、気候変動緩和策が人間社会・生態系の持続可能性にもたらす深刻な影響を分析するなど、ネット・ゼロの実現性・困難性を精査した上で、対策を検討し、実装していくことが必要であると考えられています。
本セッションでは、アジア諸国や日本国内の地域特性を踏まえつつ、ネット・ゼロ実現のための気候変動緩和策の実装化に向けた支援の方法論について、発表及びディスカッションを行いました。
環境研究総合推進費課題2-2002「世界を対象としたネットゼロ排出達成のための気候緩和策及び持続可能な開発」を実施し、気候目標達成に必要な排出経路の提示、その排出経路下で生ずる気候影響の評価、持続可能性を考慮した気候緩和策の戦略検討に取り組みました。同課題から、世代間・地域間公平性に焦点を当てた気候影響予測、気候緩和政策が各種の持続可能性に及ぼす波及影響の統合的な評価、などの研究成果を紹介します。
国立環境研究所では、環境研究総合推進費S-6や2-1908、1-2202などの研究を通じて、AIM(アジア太平洋統合評価モデル)をアジアの国々に適用し、脱炭素社会に向けたシナリオ開発を、アジアの研究者と協力して行ってきた。本報告では、そうした脱炭素シナリオ研究の成果を紹介する。また、アジアにおけるモデル開発やシナリオ定量化、さらには得られた研究成果の社会実装としての政策対話等の過程から、研究成果としてのシナリオの役割や人材育成の重要性について説明する。
パリ協定の目標とSDGsの実施におけるシナジーアプローチへの関心が高まっており、シナジーを生み出す政策の実施だけでなくそのフォローアップ・レビューもますます重要になっている。IGESの研究チームは2022年からSDGsの達成に向け、どのようにフォローアップ・レビューのガバナンスを強化し、実施のさらなる強化に繋げていけるかという点に着目して研究を進めてきた。本セッションでは、その研究成果を紹介しつつ、気候変動緩和やSDGsとのシナジーを推進する施策のフォローアップ・レビューへの示唆を述べる。
地域特性に応じた重点戦略に資する政策,及び環境イノベーションの導入の地域での未来効果を算定する評価システムを議論する.脱炭素社会実現の包摂性を考慮しつつ、現状の長所短所を含む地域診断と、将来の脱炭素目標の設定、及びそこに至る先導事業の設計評価システムについての議論する。脱炭素を実現する中核的な技術・施策群として地域自律エネルギー,次世代交通,脱炭素建設ストックに注目してそれらの取り組みの重層的な価値の創出を可能にする計画と評価のガイドラインシステムの開発研究について議論する。効果計測のスマートモニタリングシステムの構築を含む社会実装研究の取り組みを紹介する。
主催 |
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共催 |
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