気候変動と生物多様性の分野でも他の分野と同様に、政策による条件付けが、具体的な行動を可能にします。科学は政策に情報を提供する依り代であり、また、科学がどのように行動に伝達されたかについて政策からのフィードバックを必要としています。そのため、科学と政策の間のインターフェースは相互往来ができるように設計されていなければなりません。IPCCとIPBESは国際的なレベルで、気候変動と生物多様性についてこのような役割を担うように設立され、主として政策決定者向けの一連の評価を通じて、求められた役割を着実に遂行してきました。IGESにはIPCCとIPBES双方の技術支援ユニットが設置されており、複数年・複数国にわたる評価を行う専門家集団の一翼を担ってきました。このセッションではIGESの4名の研究職員と、IPCC、IPBESの専門家を招いて議論します。今年のISAPのテーマに鑑み、パネルディスカッションでは感染症に関する理解の進展という文脈で、IPCCとIPBESの評価についても検討します。
「科学と政策のインターフェース」の意味、その橋渡しをするメカニズム、行動を促す方法を追求します。IPCCやIPBESの専門家が発表者やパネリストとして登壇し、特に気候変動と生物多様性について議論します。
スピーカー気候変動に関する政府間パネル(IPCC) 副議長
ヨウバ・ソコナ
気候変動に関する政府間パネル(IPCC) 副議長
現在サウスセンター の持続可能な開発のシニアアドバイザー。
40年以上にわたり、アフリカにおけるエネルギー、環境や持続可能な開発の分野を牽引し、様々な国・大陸レベルの取り組みの中心にいた経験を持つ。「アフリカ再生可能エネルギーイニシアティブ」の範囲、枠組み、開発の調整を担った。1990年からIPCC報告書の主席執筆者として活躍し、IPCC第5次評価報告書の第3作業部会(気候変動の緩和)の共同議長を務め、2015年10月にはIPCCの副議長に選出された。さらに、アフリカ気候政策センター(ACPC)の初代コーディネーターやサハラ・サヘル観察所(OSS)の所長として、長年のリーダーシップや管理能力の実績を残している。ソコナ博士の知恵は多くの機関から求められており、ロンドン大学(UCL)の名誉教授、アフリカ科学アカデミー委員、国際応用システム分析研究所(IIASA)の科学委員会委員、アフリカのエネルギー・リーダーズ・グループの特別顧問、米コロラド鉱業大学ペイン公共政策大学院の諮問委員という形で様々な理事会や組織に関与している。ソコナ博士は、深い技術的な知識、豊富な政策経験、そしてアフリカ主導の開発への強いコミットメントをもとに、世界的に活躍されている。
生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES) 副議長
ヨンべ・スー(徐榮倍)
生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES) 副議長
ソウル大学天然物科学研究所教授(1993年~現在)。学部・大学院の双方で、生物学、植物分類学、薬用植物、天然資源について教鞭をとる。顕花植物の系統発生についての調査や、北東アジア諸国における漢方薬の植物起源を特定する研究を積極的に実施。IUCN(国際自然保護連合)のアジア地域委員会の委員長(2009-2015)や、CBD SBSTTA(生物多様性条約科学技術助言補助機関会合)の運営委員会(ビューロー)(2013-2015)など、様々なレベルで環境と生物多様性に関する世界的な議論に貢献。現在、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)の運営委員(二期目)を務める。
IGES 自然資源・生態系サービス プログラムディレクター/IPBES侵略的外来種評価技術支援機関(IPBES-TSU) アドバイザー
アンドレ・マーダー
IGES 自然資源・生態系サービス プログラムディレクター/IPBES侵略的外来種評価技術支援機関(IPBES-TSU) アドバイザー
アンドレ・マーダー氏は国際的な生物多様性政策を専門とする保全生物学者である。2018年7月にIGESに入社。それ以前までは、3年間スイスに拠点を置き、ヨーロッパと中央アジアのIPBES地域アセスメントの調整を担当。それ以前には、カナダの生物多様性条約事務局で4年間、地方レベルで条約の実施を監督、南アフリカのICLEIの都市生物多様性センター(Cities Biodiversity Centre)で5年間、「生物多様性のためのローカルアクション(Local Action for Biodiversity)」イニシアティブの責任者を務めた。その他、アフリカや中東で、地方レベルの政府関係者の能力開発、様々な生態学的フィールドワーク、野生生物繁殖センターの設立事業への参加、自然保護区の管理などを行ってきた。
IGES 自然資源・生態系サービス
リサーチマネージャー
髙橋 康夫
IGES 自然資源・生態系サービス リサーチマネージャー
専門は生態学と自然の価値評価。IPBESアジア・オセアニア地域評価報告書にフェローとして執筆に参加した他、IPBES地球規模評価報告書にはcontributing authorとして関与。この他、自然と共生する農林水産業を国際的に推進するSATOYAMAイニシアティブに関する助成事業や調査研究にも携わる。北海道大学農学部卒、英国ケント大学ダレル保全生態学研究所修士課程修了。
IGES 自然資源・生態系サービス 主任研究員
ラザシ・ダスグプタ
IGES 自然資源・生態系サービス 主任研究員
2018年5月にIGES自然資源・生態系サービス領域主任研究員に着任。生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)、生態系サービスの空間的定量評価、土地利用変化予測、社会生態学的シナリオの開発、参加型生物多様性保全、社会林業を含む、景観生態学・計画が専門。以前は、インド、バングラデシュ、ミャンマーのマングローブ地域の地域コミュニティに深く関わっていた。IGES着任前には、JSPS博士研究員として東京大学大学院農学生命科学研究に勤務し、政府、NGO、学界など、複数の技術的および管理的立場での業務実績がある。IPBESのアジア・オセアニア地域評価報告書の主執筆者、野生種の持続可能な利用に関する評価の主執筆者(2018-21)、IPCC第6次報告書(WG-II)のチャプターサイエンティスト、東京大学サステイナビリティ学総合研究システム(IR3S)准教授も務める。
IGES 自然資源・生態系サービス 主任研究員
パンカジ・クマール
IGES 自然資源・生態系サービス 主任研究員
パンカジ クマール博士は、水資源と気候変動適応の分野で主任研究員として2018年4月から地球環境戦略研究機関に加わりました。それ以前は、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)において日本学術振興会(JSPS)のポストドクトラルフェローを3年以上務めました。近年の彼の研究は「東南アジアの開発途上都市における清浄な都市の水環境のための水質評価とシナリオモデリング」に焦点を当てた学際的研究です。これは、グローバルな変化と急速な都市化の下で増大する水需要に対処するためにコミュニティのレジリエンスを強化することを目的とし、最終的には持続可能な水資源管理の解決策を政策レベルで提供することを目的としています。彼は筑波大学で地球環境科学を専攻し、博士号を取得しています。博士課程を修了した後は、インドのグジャラート州にあるInstitute of Science & Technology for Advanced Studies & Research(ISTAR)で助教授として勤務しました。彼は気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書(AR5)の章の執筆科学者としての実務経験もあります。彼は主に2014年12月に発表された「インパクト、適応、および脆弱性」に焦点を当てたIPCCの作業グループII報告書の執筆に関わりました。また、現在は生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)事務局の下で、気候変動の文脈における生物多様性、水、食料、健康の間の相互関係のネクサス評価のスコーピング専門家としても貢献しています。彼は、著書、査読付論文、国際的評価の高い著書における章の執筆、モノグラフを含む多数の研究出版物を発表しています。
IGES 研究顧問
甲斐沼 美紀子
IGES 研究顧問
IGES研究顧問。1977年に国立環境研究所(NIES)に入所し、1990年から、全球に加えて、アジア太平洋地域に注目した気候安定化のための政策オプションの検討に用いる、アジア太平洋統合評価モデル(AIM)の開発に取り組む。2009年から2014年まで環境省地球環境研究総合推進費戦略研究「アジア低炭素発展プロジェクト」の研究統括を務め、また、2003年から2014年まで北陸先端科学技術大学院大学の客員教授を務めた。最近では、アジアにおける低炭素社会構築、エネルギーシステム、社会的発展に研究の重点を置いている。また、国際ジャーナルや本で論文を発表してきており、主な著作等として、Climate Policy Assessment (2003)、Methodologies for leapfrogging to low carbon and sustainable development in Asia (2017)、Post-2020 Climate Action: Global and Asian Perspectives (2017)等が挙げられる。 これまでの受賞歴として、環境科学会学術賞(2011年)、科学技術への顕著な貢献2010(ナイスステップな研究者)(2010年)、日経地球環境技術大賞(1994年)等がある。同氏はまた、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次及び第5次評価報告書と、IPCC 1.5℃特別報告書のリードオーサーを務めた。また、国連環境計画の第6次地球環境概況(GEO-6)の統括執筆責任者を務めた。2016年には、フォーブスジャパン「世界で闘う日本の女性55」に選出された。