facebooktwitterlinkdinmaillanguage
After ISAP: テーマ別会合2(AT-2)
  • 2024年1月16日
  • 10:00 - 11:15
  • 同時通訳あり

水俣条約発効後の成果と課題および途上国における水銀管理を考える

要約

水銀は、古くから金メッキや体温計、蛍光灯などに用いられる有用な金属である一方、高い毒性を持ち、日本では1950年代に水俣病が発生しました。日本では水銀被害の経験を踏まえて対策が進む一方、世界では零細・小規模金採掘(ASGM)や産業からの人為的排出による健康影響が懸念される状況にあり、人の健康および環境を保護することを目的とした水俣条約が2013年に採択され、2017年に発効しています。環境再生保全機構(ERCA)が主催した本セッションでは、同条約下で講じられてきた対策による成果と課題を中心に講演とパネルディスカッションを行いました。高岡昌輝氏は、水銀排出量や水銀によるリスクについて将来シナリオを元に推移を示しました。そして、不断の改善努力を行うことで、水俣条約の実効性が上がっていくとしました。中島謙一氏は、対策に伴う副次的影響に着目し、例として、脱炭素対策やASGMでの水銀対策に目を向けました。シナリオ分析を通じて、対策ごとの便益とトレードオフを見極めることや、対策コストを考慮して施策を立てる必要性に言及しました。中澤暦氏は、パッシブサンプラーを用いてインドネシアのASGM現場で試みた大気中の水銀濃度の観測結果について報告しました。

主要メッセージ
  • 水銀排出量についての複数の将来シナリオを分析しながら、対策効果を見極め、さらに戦略的な水銀モニタリング指針を策定することが重要となる。
  • 将来シナリオの定量化に際しては、水俣条約の他、急速に進展する脱炭素対策(石炭燃焼の減少やバイオマス発電の増加など)や経済成長に伴う資源需要の拡大などの影響を織り込んだ上での精緻化が鍵となる。また、対策を講じる上では、違法な貿易に伴う水銀の移動や廃水銀の隔離管理といった要素も考慮に入れる必要がある。
  • 健康影響評価に関しては、詳細な濃度の把握とリスク評価が重要になる。ASGM従事者の多い国のひとつであるインドネシアにおける試みから、効果的な観測手法が開発されるとともに、暴露量に基づいた科学的なリスク評価が見えてくるだろう。

プログラム

モデレーター
小山 次朗 環境再生保全機構(ERCA) 環境研究総合推進部 プログラムオフィサー
開会挨拶
田中 良典 環境再生保全機構(ERCA)理事
水銀問題の過去、現在、未来
高岡 昌輝 京都大学 都市環境工学専攻 教授
水銀:使用、貿易、そして、人為的排出
中島 謙一 国立環境研究所(NIES) 資源循環領域 主幹研究員
パッシブサンプラーを用いた小規模金採掘地域の大気中水銀濃度の平面分布の評価
中澤 暦 富山県立大学 環境・社会基盤工学科 講師
主催
  • 独立行政法人 環境再生保全機構(ERCA)
共催
  • 公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)

ISAP2023 ポスターセッション

今年のISAPでは、メイン会場であるパシフィコ横浜5階のエレベーター前のスペースで、ポスターセッションを実施します。ポスターセッションとは、研究員がそれぞれの研究や活動を紹介するポスターを貼り出し、関心のある方・お立ち寄りいただいた方にその内容を直接ご説明する発表形式で、国際会議や学会などでは一般的な発表方法です。

IGESではISAPの会合で取り上げられているトピック以外にも、様々な研究や活動が行われています。そうした多様なプロジェクトについて、研究員と直接対話していただけます。研究員たちにとっても、質問を受けることによる新たな気づきや、同じような研究をしている方との繋がりなど、得るものが多いのがポスターセッションです。会場にお越しの際には、ぜひポスターの発表者に気軽に声をおかけください。ステージからの発表を聞くセミナーとはまた違った、ポスターセッションならではの会話のキャッチボールをお楽しみください。

さらに、今回はスペシャル企画として、生物や科学に興味を持つ中学生・高校生もポスターセッションに発表者として参加してくれます。IGESの研究員と肩を並べて自分の研究を発表する、若き研究者の卵にもご注目ください。

詳細はこちら

各セッションへ申し込み