- 世界中で気候安全保障への関心が高まり、様々な気候安全保障の定義が議論されている。その中で、気候変動によるリスクだけでなく、得られる機会についても考慮する必要がある。
- 気候安全保障の中でも、人の移動、食料安全保障、エネルギーなど、テーマごとの議論が進んでおり、それらに対する対策の実施が喫緊の課題となっている。
- 気候リスクへの対応を促進するには、気候安全保障に関する理論的な視点と、さまざまな事例から得られた地域の視点を組み合わせることが重要である。
(英語のみ)
本セッションでは、IGESの新たな取り組みであるアジア太平洋気候安全保障(APCS)プロジェクトを紹介し、理論的・実際的な観点から議論しました。はじめに、岡野直幸が、これまでの気候安全保障に関する議論の展開、COP28で開始された気候安全保障に関する新たなイニシアチブについて紹介しました。続く基調講演では、フロリアン・クランペ氏が、人々の脆弱性と安全保障の不安定化とを区別することの重要性を強調し、気候変動の影響を受ける場所が、必ずしも安全保障や紛争の懸念が生じる場所とは限らないことを示しました。次に、プリヤトマ・シン氏は、フィジーにおける人間の移動の問題を取り上げ、存在論的安全保障の重要性について言及し、特にアイデンティティや土地への愛着といった、人間やコミュニティの視点を見逃すことはできないと説明しました。ナジア・フーセーン氏は、食料安全保障の複雑さについて語り、ジェンダーの不平等から土地の権利争いに至るまで、地域の文脈を正しく理解しながら政策を明確にすることの難しさを指摘しました。ナンダ・クマール ジャナルダナンは、ネット・ゼロへの急速な移行が安全保障と地政学的にどのような意味を持つか、また、エネルギーと資源に関する伝統的な考え方がどのように変容していくかを議論しました。質疑応答では、気候安全保障における民間セクターの役割や技術開発の見通しなどについて意見交換を行いました。
ISAP2023 ポスターセッション
今年のISAPでは、メイン会場であるパシフィコ横浜5階のエレベーター前のスペースで、ポスターセッションを実施します。ポスターセッションとは、研究員がそれぞれの研究や活動を紹介するポスターを貼り出し、関心のある方・お立ち寄りいただいた方にその内容を直接ご説明する発表形式で、国際会議や学会などでは一般的な発表方法です。
IGESではISAPの会合で取り上げられているトピック以外にも、様々な研究や活動が行われています。そうした多様なプロジェクトについて、研究員と直接対話していただけます。研究員たちにとっても、質問を受けることによる新たな気づきや、同じような研究をしている方との繋がりなど、得るものが多いのがポスターセッションです。会場にお越しの際には、ぜひポスターの発表者に気軽に声をおかけください。ステージからの発表を聞くセミナーとはまた違った、ポスターセッションならではの会話のキャッチボールをお楽しみください。
さらに、今回はスペシャル企画として、生物や科学に興味を持つ中学生・高校生もポスターセッションに発表者として参加してくれます。IGESの研究員と肩を並べて自分の研究を発表する、若き研究者の卵にもご注目ください。
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