東南アジア諸国連合(ASEAN)共同体は、今後2年以内にASEAN気候変動戦略行動計画2025-2030(ACCSAP)を策定し、ASEAN気候変動センター(ACCC)を設立する予定です。これは、地域レベルおよび国レベルの既存の政策・制度の枠組みを統合し、レジリエントなネット・ゼロASEANの実現に向けて示すASEANの道筋を可能にするためです。緩和と適応の統合的移行のためには、長期戦略(LTS)、国が決定する貢献(NDC)、国別適応計画(NAP)などの各国の気候政策を、統合されたロードマップに関する革新的な方法論に基づいて更新することが不可欠です。これにより、気候変動目標と対策が国内のセクター別政策に主流化されるきっかけとなります。さらに、気候変動に対する脆弱性、緩和と適応の能力の観点でのASEAN諸国の多様性を考慮すると、特に①長期的な国家開発ビジョン、②気候目標、③緩和と適応の道筋に関する主要な課題と重要な要因について、国や複数のステークホルダー間の差異を把握することが肝要です。このような背景のもと、本セッションでは、現在進行中の国際研究プロジェクトの予備的な結果(質問票調査分析および国内ワークショップでの各省庁との協議)を共有しました。また、専門家、電力・金融セクターを含む産業界、若者といった主要なステークホルダーの意見・認識を踏まえて議論を行い、ASEANを含むアジア諸国における国家政策レベルでの緩和と適応の統合に関する提言を行いました。
インドネシア・ボゴール農業大学 教授 / 環境・気候変動国際研究所 所長
リザルディ・ボア
インドネシア・ボゴール農業大学 教授 / 環境・気候変動国際研究所 所長
ボゴール農業大学(IPB)教授、環境・気候変動国際研究所所長。1994年にオーストラリアのシドニー大学で博士号を取得。1998年より気候変動の緩和と適応、特に農業、森林、その他の土地利用に関する研究に従事。低炭素政策や気候レジリエンス開発に関連した研究を精力的に行っている。多くの国際科学チーム、国家研究ミッション、国連やハイレベルなグローバルプレーヤーによる科学プロジェクト(特にREDDに関して、UNFCCC、SDSN、IDDRI、DANIDA、IGES、JICA、NIESなど)に参加。WMO(世界気象機関)のRA-V地域農業気象ワーキンググループ議長(2002~2009年)、IPCC温室効果ガスインベントリタスクフォース事務局メンバー(2008~2015年)を経て、現在はインドネシア農業気象学会の専門家委員会委員長、アジア温室効果ガスインベントリワーキンググループ(WGIA)、アジア低炭素研究ネットワーク(LoCARNet)の諮問委員会メンバーを務める。
フィリピン大学ロスバニョス校 School of Environmental Science and Management(SESAM)非常勤教授
ダマサ・マカンドッグ
フィリピン大学ロスバニョス校 School of Environmental Science and Management(SESAM)非常勤教授
マカンドッグ博士は積極的に研究に携わり、学際的な研究チームを率いている。現在は、「ASEAN諸国における緩和と適応の相乗効果を図るための国家長期ロードマップに関するガイダンスの開発」プロジェクトに携わっている。2021年ASEAN気候変動現状報告書への貢献者。研究テーマは、気候変動と環境リスク評価、淡水湖の生態学的研究、土地利用の変化と生物多様性および水文学的バランスへの影響、生物多様性情報システム、沿岸災害緩和におけるマングローブ生態系サービス、気候に関する意思決定支援枠組みの開発、先住民族ムヨン・パヨシステムにおける水と栄養分の動態、海洋プラスチックごみ、農業・アグロフォレストリー生産システムの持続可能性など。
植物生態学、生態学原理、定量生態学、生態系サービスと気候変動、地球科学、生物学の講義を担当。現在はフィリピン大学ロスバニョス校 School of Environmental Science and Management(SESAM)の非常勤教授。生物学、植物学、環境科学の学部生および大学院生のアドバイザーとして、彼らの研究活動を指導している。
タマサート大学 持続可能エネルギー・建築環境研究 建築・計画学部 ユニット長
ブンディット・リメンチョクチャイ
タマサート大学 持続可能エネルギー・建築環境研究 建築・計画学部 ユニット長
現在、タマサート大学建築・計画学部の持続可能エネルギー・建築環境研究ユニット長。また、タイ温室効果ガス管理機構理事会の専門家メンバー(エネルギー)も務める。
アジア工科大学で工学博士号(エネルギー経済学・計画)と工学修士号(エネルギー技術)を取得。モンクット王工科大学ノースバンコク校で機械工学を専攻。専門は温室効果ガス排出、統合評価モデリング、エネルギー。経済学と気候変動、エネルギー・システムのモデリング、発電輸送 産業および建築物におけるエネルギー技術、CO2緩和、統合資源計画。
研究テーマは、環境・生態経済学、気候変動緩和のマクロ経済的影響、気候レジリエンス。
ベトナム気象・水文学・気候変動研究所(IMHEN)
科学・研修・国際協力・ジャーナル 部長
チャン・タイン・トゥイ
ベトナム気象・水文学・気候変動研究所(IMHEN) 科学・研修・国際協力・ジャーナル 部長
ベトナム気象・水文学・気候変動研究所(IMHEN)の科学・研修・国際協力・ジャーナル部長。環境・気候変動分野の専門家。2003年にタイのモンクット王工科大学トンブリ校エネルギー・環境共同大学院で修士号を取得。
2010年以降、数多くの気候変動プロジェクトでチームリーダーやメンバーとして重要な役割を果たしてきた。UNDP支援プロジェクト「ベトナムにおける気候変動対応能力の強化、脆弱性の低減、温室効果ガス排出の抑制」のプロジェクトマネージャー(2010年~2014年)、ベトナムにおけるNDC策定のための適応策と緩和策のコベネフィット評価(2018年、2022年)のチームリーダー、ベトナムの適応行動のモニタリング・評価システムの開発(2022年)、ベトナムのNAP実施の評価(2024年)などに貢献。