全体会合 2 (PL-2)
  • 2025年7月29日
  • 10:50 - 11:50
  • 503 + オンライン
  • 同時通訳あり

COP30に向けた提言:ネット・ゼロと持続可能な開発を実現するシナジーアプローチによる気候変動対策

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要約

本セッションの冒頭、小圷一久は、パリ協定6条の完全運用化について触れ、温室効果ガス排出削減の手段にとどまらず、社会・環境・経済にまたがる相乗効果を生むツールとしての重要性を強調しました。特に、気候変動対策と、生物多様性の保全、循環経済の推進、社会的公平性といった他分野との統合を可能にすることが、今後の国際協力における鍵であると述べ、シナジーがCOP30で議論される中心テーマの一つとして位置付けられていると指摘しました。そして、各パネリストに対して「シナジーアプローチのビジョンとは何か」と「実際に行動に移すための道筋はどうあるべきか」という二つの質問を投げかけました。

ペルマル・アルムガンピライ・カルヤニ氏は、COP30が初めてグローバル・ストックテイク(GST)を本格的に活用するCOPであることを指摘し、GSTが気候変動対策を持続可能な開発目標(SDGs)の優先課題、特に貧困削減や社会的包摂と結びつける重要な枠組みであると強調しました。エンヒケ・エレー氏は、1992年のリオ会議、ミレニアム開発目標(MDGs)、SDGsという国際的な持続可能性枠組みの流れを振り返りながら、地域住民が自発的に協力し、共通課題に取り組む「Mutirão」というブラジルの概念を取り上げ、地域社会における包摂的協力と共同行動の象徴として紹介しました。シャーム・サックル氏は、国際熱帯木材機関(ITTO)の活動や自然に基づく解決策(NbS)に触れ、合法かつ持続可能な熱帯木材の取引が森林保全、食料・水の安全保障に寄与する事例を示しました。プルヴィ・メータ氏は、気温上昇1.5℃のシナリオにおいて米や乳製品の生産量が減少する可能性に言及し、経済的に持続可能で展開可能な気候技術の必要性を強調しました。

続くディスカッションでは、ペルマル・アルムガンピライ・カルヤニ氏が、NbSが緩和と適応の双方に寄与するとともに、雇用創出や清浄な社会といった共便益を生むことを示し、これらを国家戦略の中核に据えるべきと述べました。エンヒケ・エレー氏は、森林保全を支える投資基金「Tropical Forest Forever Facility(TFFF)」を紹介し、官民資金や国際協力を通じた推進の重要性を提案しました。プルヴィ・メータ氏は、アフリカにおける投資不足と既存の取り組み・知見・資源の体系的整理の必要性を訴え、各国や国際機関が既存の取り組みや知見・資源を共通の枠組みとして統合的に活用することを求めました。シャーム・サックル氏は、森林分野が軽視されがちな現状に懸念を示し、ITTOが主導してきた成功事例を再活用すべきと述べました。

最後に、小圷一久は、COP30がSDGs採択から10年の節目にあたること、そして1992年のリオ会議以来初めてブラジルで開催されるCOPであることの意義を再確認しました。単なる約束から実装への移行という歴史的機会であり、政策、技術、資金、関係者の協働、さらに若者や途上国・先進国を巻き込んだ包摂的な取り組みが不可欠であることを強調しました。

主要メッセージ
  • パリ協定ルールブックがほぼ整備され、COP30はこれを具体的行動に移す「実装のCOP」として位置付けられる。特にGSTに基づく即時行動が求められ、貧困や社会的課題との統合的進展が国・地域レベルで期待される。
  • シナジーを活かし、分野横断的に統合的な取り組みを進めることが重要である。国が決定する貢献(NDC)、GST、パリ協定6条やNbSなどのツールを活用し、SDGsとの同時達成を目指す。
  • TFFFなどの新しいメカニズムを活用して官民資金を動員するほか、知見の共有を進め、若者や途上国・先進国を巻き込んだ協働によるスケーラブルな実装を推進することが求められる。

パネル討論

モデレーター
小圷 一久 IGES パリ協定6条実施パートナーシップ センター長
 駐日ブラジル連邦共和国大使館 エネルギー・環境・農務部長
プルヴィ・メータ シニア・グローバル気候スペシャリスト
シャーム・サックル 国際熱帯木材機関(ITTO)事務局長
 国連気候変動枠組条約事務局(UNFCCC) 緩和部 市場および非市場支援・ステークホルダー対応課 マネージャー
小圷 一久

小圷 一久

IGES パリ協定6条実施パートナーシップ
センター長

駐日ブラジル連邦共和国大使館 エネルギー・
環境・農務部長

エンヒケ・エレー

エンヒケ・エレー

駐日ブラジル連邦共和国大使館 エネルギー・環境・農務部長

エンヒケ・エレーは、1985年12月24日にブラジル、フロリアノポリス市で誕生。サンタカタリーナ連邦大学機械工学科を卒業、パリ第1 パンテオン・ソルボンヌ大学より経営学修士号を取得。

民間部門において、フランスの自動車産業および原子力産業の企業に勤務、またブラジルの大手鉄鋼メーカーに勤務。2013年、国家公務員試験を経てブラジル外務省に入省。同省では、国会対応室および外務大臣官房に配属。また、ブラジル連邦共和国大統領府でも勤務。

在ドイツ・ブラジル大使館にて経済部長として3年間勤務。2023年8月より、駐日ブラジル大使館にてエネルギー・環境・農業部長。

プルヴィ・メータ

プルヴィ・メータ

シニア・グローバル気候スペシャリスト

シャーム・サックル

シャーム・サックル

国際熱帯木材機関(ITTO)事務局長

国連気候変動枠組条約事務局(UNFCCC)
緩和部 市場および非市場支援・ステークホルダー対応課 マネージャー

ペルマル・アルムガンピライ・カルヤニ

ペルマル・アルムガンピライ・カルヤニ

国連気候変動枠組条約事務局(UNFCCC) 緩和部 市場および非市場支援・ステークホルダー対応課 マネージャー

At UNFCCC, manages the implementation of the Markets and non-markets related work under the Paris agreement, and under the Kyoto Protocol. In his role cover the intergovernmental negotiations process on all international co-operative and market related instruments under the convention, Kyoto Protocol and the Paris agreement (Article 6). He provides strategic, managerial, and technical guidance for the development of regulations in Paris Agreement crediting mechanism (PACM), Review of the cooperative approaches under Article 6 and its relevant reporting, stakeholder interaction and capacity building efforts.

He is a representative nominated from UNFCCC to participate in G20 process related to climate, development and sustainable finance working groups. In addition, he also serve as member of working groups related to CORISA implementation aspects in the International civil aviation organization (ICAO) process covering issues like alternative fuels for aviation and carbon offsets. Prior joining the UNFCCC, consecutively for four years elected from the Asia pacific region as expert member to support four technical bodies under the CDM – Executive Board in areas of development of quantification methodologies to measure GHG impacts by mitigation activities, assessment of GHG mitigation (CDM) projects and performance evaluation of independent auditors (DOE) under the CDM. Have experience in implementation of energy efficiency measures in more than 50 industrial facilities. The only member ever to participate in all the four technical bodies. Also, have served as country expert to the Asian development bank on oil and gas sector mitigation projects.

He is a chemical engineer by graduation and a postgraduate in energy management and certified Energy Auditor, with more than twenty years of experience in conceptualizing, developing and implementing climate mitigation projects across globe covering varied sectors and technical areas using international financing schemes & mechanisms.

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