- 2025年7月29日
- 16:00 - 17:00
- 503 + オンライン
- 同時通訳あり
日本およびその他G7の都市における健全なネット・ゼロ移行のためのコベネフィットの活用
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要約
本セッションでは、気候変動対策がもたらす地域へのコベネフィット(共便益)に着目し、気候変動対策と市民の健康や公衆衛生を統合するアプローチが都市のネット・ゼロ移行を加速する可能性について議論を行いました。
最初に、赤星香が、川崎市、新潟市、八戸市、パリ市およびオースティン市が参加し、2023年に始動した「ウェルカムプロジェクト」を概説しました。気候変動対策がもたらす多様なコベネフィット(健康改善、経済的便益など)を定量化し、政策決定者や市民に「見える化」することで、エビデンスに基づく政策立案を支援していると紹介しました。
次に、参加各都市が、本プロジェクトでの取り組みと得られた知見を共有しました。八戸市の中村栄司氏は、欧米都市の猛暑対策や、社会経済的弱者への配慮を組み込んだ公平性の重視から示唆が得られたと述べました。特に、自然に基づく解決策(NbS)としての公園緑化について、景観改善に留まらず、市民のクーリングスポットやメンタルヘルス増進の場として多角的に活用する姿勢を学んだことに言及しました。川崎市の近藤玲子氏は、視察後の川崎市におけるヒートマップを用いた暑熱対策計画や、市民参加型ワークショップを通じた行動変容促進の取り組みについて報告しました。コベネフィットを定量化・可視化することで、市民や多様なステークホルダーが気候変動対策を「自分ごと」として捉えられるようになると指摘しました。新潟市の上ノ山貴嗣氏は、日本海沿岸部の海面水温上昇という地域固有の課題を示し、緩和策と適応策の統合の必要性を指摘しました。再エネの導入や電動モビリティへの転換が、温室効果ガス(GHG)と同時にPM2.5を削減するコベネフィット効果をもたらす点に言及しました。特に、PM2.5削減により753人分の早期死亡リスクを削減できるという本プロジェクトの分析結果は、政策の費用対効果を示す重要なファクトとなると述べました。一方で、科学的知見を自治体の政策サイクルに組み込む体制構築や、専門家との継続的な連携が課題であると指摘しました。
続いて、デイビッド・J・イートン氏が、オースティン市の気候政策の評価結果を報告しました。アクティブモビリティ(歩行・自転車利用)の促進が2040年までに約20億ドルの健康関連経済効果をもたらし、さらに気温上昇対策が夏季の救急医療支出を1日当たり約9,000ドル削減するという試算は、適応策の直接的な経済便益を明示していると述べました。また、内田東吾氏は、気候変動や生物多様性の損失、大気汚染といった課題群に対応するには、政策判断や市民理解を促進する「見える化」ツールが不可欠であると強調しました。一方で、ツール導入のみでは不十分であり、それを活用して社会的なムーブメントをいかに形成するかが、今後の重要な課題であると述べました。最後に、ライアン・レオン氏は、「健康」を切り口に気候変動への関心を高めることは、緩和と適応の両立に向けた取り組みの推進につながると指摘し、本プロジェクトの意義を評価しました。
パネル討論

赤星 香
IGES サステイナビリティ統合センター /生物多様性と生態系サービス リサーチマネージャー

エリック・ザスマン
IGES サステイナビリティ統合センター
プログラムディレクター / センター長

デイビッド・J・イートン
テキサス大学オースティン校 LBJ公共政策大学院 教授
イクレイ日本 事務局長

内田 東吾
イクレイ日本 事務局長
2006年5月に国際協力銀行(JBIC)に入行。専門調査員として世界銀行、アジア開発銀行などの国際機関のほか、韓国・中国・タイなどの援助機関との連携業務に携わる。
2009年4月から国際協力機構(JICA)の企画調査員としてタイに3年、カンボジアに5年勤務。環境・気候変動分野の国際協力事業を担当し、環境公害対策、気候変動対策のほか、都市の環境インフラ支援事業に従事。2017年7月に(公財)地球環境戦略研究機関(IGES)に入所、ASEAN各国都市のSDGs推進事業を担当。2018年7月より現職。

ライアン・レオン
ウェルカム財団 気候と健康チーム
緩和リサーチマネージャー