テーマ別会合 5 (TT-5)
  • 2025年10月10日
  • 14:00 - 15:30
  • オンライン
  • 同時通訳あり

気候変動問題の解決に向けた自然に基づく解決策(NbS)の各国の実装と現状について

要約

室効果ガス排出削減に向けて、解決策の一つとして近年注目を集めているのが「Nature-based Solutions(NbS / 自然に基づく解決策)」です。NbS とは、自然が有する機能を持続可能に利用し、多様な社会課題の解決につなげる考え方ですが、各地域の社会的・地理的背景に応じた実装や評価方法の枠組みはまだ十分に整理されておらず、制度構築や資金調達面でも課題が残っています。本セッションでは、NbS を研究・実践している研究者による講演とパネルディスカッションを実施しました。

齊藤修は、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学- 政策プラットフォーム(IPBES)のネクサス評価においてNbS は有効な対応策の一つに位置づけられているが、再生可能エネルギーの拡大など、自然との共生を基盤とした対策を実行するには、生物多様性保全など他の環境施策とのトレードオフに十分配慮した計画を立てる必要があると言及しました。茅根創氏は、NbS の例として、海面上昇によって水没の危機にある太平洋環礁国において行われている、サンゴの修復や有孔虫の保全などを組み合わせた持続可能な海岸防護に関する研究を紹介しました。西廣淳氏は、NbS を長期的に維持していくためには、適切な空間スケールで地域特性に応じた取り組みを計画し、自然共生サイト指定などのインセンティブの整備や、民間・行政のネットワークを維持していく方策を明確化していく必要があると提示しました。

主要メッセージ
  • NbSを実装する上では、他の環境施策とのシナジーやトレードオフへの配慮が必要となる。例えば、再生可能エネルギーの導入拡大は生物多様性への影響が懸念されており、現在国内において、自然保護区域の拡大と災害リスクを踏まえた、再生可能エネルギー適地の地図化に向けた研究が進められている。
  • 太平洋環礁国の持続可能な沿岸保全を実現する上でNbS は非常に有効である。サンゴの修復や有孔虫の保全と組み合わせた持続可能な海岸防護が重要であり、日本はこれまでに培った技術と経験を生かして支援を行っている。
  • NbS において重要なランドスケープアプローチの実例はまだ少ない。千葉県印旛沼流域での研究からは、休耕地の湿地再生により水害リスク低減と生物多様性の回復が期待できることが明らかになった。地域の特性に応じた取り組みを長期的に行うためには、各種インセンティブの整備や民間・行政のネットワークを維持する方策の明確化が必要である。

サマリ―作成者: 独立行政法人環境再生保全機構 環境研究総合推進部研究推進課

パネル討論

司会
東條 純士 環境再生保全機構(ERCA)上席審議役
開会挨拶
福山 賢一 環境再生保全機構(ERCA)理事
モデレーター
山ノ下 麻木乃 IGES 生物多様性と生態系サービスユニット リサーチディレクター
「再生可能エネルギー導入における自然に基づく解決策との最適化に向けて」
齊藤 修 IGES 生物多様性と生態系サービスユニット プログラムディレクター
「海面上昇で水没する環礁国の生態工学的適応策」
茅根 創 東京大学大学院 工学系研究科 社会基盤学専攻 特任研究員
「自然を起点とした課題解決(NbS)に向けた多様な主体の協働 ― 印旛沼流域での研究と実践 ―」
西廣 淳 国立環境研究所 気候変動適応センター 副センター長
山ノ下 麻木乃

山ノ下 麻木乃

IGES 生物多様性と生態系サービスユニット
リサーチディレクター

齊藤 修

齊藤 修

IGES 生物多様性と生態系サービスユニット
プログラムディレクター

茅根 創

茅根 創

東京大学大学院 工学系研究科
社会基盤学専攻 特任研究員

西廣 淳

西廣 淳

国立環境研究所 気候変動適応センター
副センター長

セッションサポーター