Session
科学的知見:今と未来を見る双眼鏡
人為的温室効果ガスに起因する気候変動問題は、現代社会が直面する今世紀最大の課題であり、それに対応する新たなライフスタイルや技術革新への転換は我々世代の大きな挑戦である。4半世紀にわたる科学的知見の蓄積をもとにパリ協定を契機として低炭素社会・脱炭素社会への移行の道が開かれ、2度もしくは1.5度目標の達成に向けて、各主体による行動が促されている。また、地球規模で進行する生物多様性の喪失は、人類の福利(Human Well-Being)の基盤である生態系サービスの減少を引き起こしており、この背景には気候変動などの人為的な変化要因(Drivers of change)がある。一方でこうした大変革の時代にあって、そこに届かないもどかしさ、焦燥感や無力感なども見られる。本セッションでは、最新の科学が明らかにした世界の危機について概説し、その上で、我々はいかに科学的知見と社会とを結びつけ、更に各主体による行動につなげていけるか、また、いかに現状を打開して、よい方向へと舵をとっていけるのか、共に考える機会を提供する。
SSS
ホーセン・リー
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長
SSS
アン・ラリゴーデリ
生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)事務局長
SSS
パヴェル・カバット
国際応用システム分析研究所(IIASA)所長
SSS
石井 菜穂子
地球環境ファシリティ(GEF)CEO兼議長/持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)ジャパン国際アドバイザー
SSS
アジャイ・マスール
エネルギー資源研究所(TERI)所長
モデレーター
久保田 啓介
日本経済新聞編集委員兼論説委員
モデレーター
久保田 啓介
日本経済新聞編集委員兼論説委員
早稲田大学理工学部で応用物理学を専攻。1987年、日本経済新聞社に科学記者として入社後、30年以上にわたり科学技術、環境政策、災害軽減政策などを取材。2008~09年、阪神淡路大震災記念・人と防災未来センターで調査研究に従事し、現在、リサーチフェロー。
ホーセン・リー
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長(2015 年10月~)、高麗大学エネルギーと環境大学院教授。研究分野は、気候変動の経済学、エネルギーと持続可能な開発。韓国の環境科学アカデミー理事、グローバルグリーン成長研究所(GGGI)委員、気候変動と持続可能な開発に関するアジア開発銀行総裁諮問委員等の職にある。これまでに、韓国エネルギー経済研究所初代所長、韓国環境政策・評価研究院の名誉研究員、動力資源部長官及び環境部長官の上級顧問、韓国開発研究所上級研究員、米国エクソン社エコノミスト、国際エネルギー経済学会長、韓国資源経済学会長、米国Battelle-Pacific Northwest National Lab国際諮問委員、韓国ヒュンダイ社理事、IGES理事等を務めた。また、IPCC 第 3 作業部会の共同議長としてIPCC 第二次評価報告書の作成を指揮。気候変動の社会経済的側面に関する同報告書は、京都議定書の科学的根拠となった。IPCC副議長(2008年~2015年)、IPCCの様々なアセスメントにおいてリードオーサーやレビューエディターを務めた。韓国国内のみならず国際的に、気候変動やエネルギーに関する要職を歴任。ソウル大学にて学士号、米国ラトガーズ大学にて博士号(経済学)を取得。
アン・ラリゴーデリ
生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)事務局長
2014年より初代IPBES事務局長を務める。トゥールーズ大学にて植物分子生物学の修士号、Université des Sciences et Techniques du Languedoc及びフランス国立科学研究センターにて植物生態学の博士号を取得。植物生態学者として、サンディエゴ州立大学、カリフォルニア大学デービス校、デューク大学、バーゼル大学等で特に気候変動が植物生理学や生態学に与える影響について10年にわたり研究。国連教育科学文化機関(UNESCO)、国際科学会議(ICSU)等による国際的な研究プログラムDIVERSITAS(生物多様性科学国際共同研究計画:2015年1月にグローバルな持続可能性に向けた新たなFuture Earthプログラムの一部に移行統合)事務局長を務めた。2010年フランス政府よりレジオン・ドヌール勲章授与。
SSS
パヴェル・カバット
国際応用システム分析研究所(IIASA)所長
ワーへニンゲン大学(オランダ)地球システム科学教授、オランダ王立科学アカデミーワッデン海域統合研究所長、持続可能な開発ソリューション・ネットワークのリーダーシップ・カウンシルメンバー、Alpbach–Laxenburg Group共同創設者。数学及び水文学が専門。30年にわたり地球システム科学・地球変動研究、特に大気陸面相互作用、気候水文、水循環、水資源研究に従事。気候変動に関する政府間パネル評価報告書のリードオーサー・レビューエディターを務めるほか著書多数。ザイード国際環境賞他受賞多数。2013年にはオランダ王室よりKnight with the Order of the Netherlands Lion称号を授与。
アジャイ・マスール
エネルギー資源研究所(TERI)所長
気候変動に関する首相諮問機関委員(インド)を兼任。インド政府エネルギー効率局長(2006年~2016年2月)として、電化製品のスターラベリング制度、省エネビル基準、エネルギー集約型産業へのPATプログラム(省エネ達成認証制度)導入等を通じて、家庭・オフィス・工場の省エネを推進。1986年~2000年にTERIに所属した後、世界銀行気候変動チーム(ワシントンDC)を指揮したほか、スズロン・エナジー社長、緑の気候基金(GCF)暫定事務局責任者を歴任。インドの気候変動交渉を指揮し、2015年のCOP21ではインド政府のスポークスパーソンを務める。気候変動対策の技術的アプローチに関する国際的な専門家として活躍。最近では、グローバルな産業・金融・シンクタンクのリーダーから構成されるエネルギー移行委員会の共同議長に就任し、今後、気候にやさしいエネルギーの未来に向けて企業や各国への提言を行う。
石井 菜穂子
地球環境ファシリティ(GEF)CEO兼議長/
持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)ジャパン国際アドバイザー
2012年6月から地球環境ファシリティ(GEF)のCEO兼評議会議長を務める。前職の財務省副財務官在職中には、日本の国際開発金融政策や、気候変動や生物多様性等の環境問題に対する日本の地球環境政策を統括。また、緑の気候基金の創設に向けた移行委員会の日本代表も務めた。主として国際畑を中心に勤務し、キャリアの半分を世界銀行やIMFなど国際機関で過ごす。世界銀行スリランカ・モルディブ担当局長(2006~2010年)、同銀行東アジア局ベトナム担当プログラムコーディネーター(1997~2001年)、ハーバード大学国際開発研究所プロジェクトマネジャー(1996~1997年)、IMFアフリカ・アジア担当エコノミスト(1992年〜1995年)、ハーバード大学国際問題研究所客員研究員(1984~1985年)等を歴任。慶應義塾大学で持続可能な開発と環境について教鞭を執った経験もあり、サントリー学芸賞(1990年)や国際開発研究大来賞(2004年)を受賞するなど執筆活動も多彩。第一回円城寺次郎記念賞受賞(2006年)。東京大学博士。