プラスチック汚染は、水環境へ悪影響を及ぼす解決が困難な地球環境問題の一つです。淡水域のプラスチックは生態系への脅威であり、人間の健康被害へつながる可能性があります。さらに河川はごみを海へと運ぶため、一部の汚染が地球規模の問題となります。河川から海へ流出する年間115万~241万トンのプラスチックごみの約86%はアジアの河川からの流出と推定されています。5mm以下のマイクロプラスチックは、表面に有害な化学汚染物質を蓄積し、食物連鎖を通じて人間の体内に入る汚染物質の一つです。この問題についての科学的根拠に基づく政策立案を促進させるには、マイクロプラスチックの発生、動態、影響についての理解が重要です。
本セッションでは、マイクロプラスチックに関する知見の現状を包括的に概観し、ASEAN諸国での事例を通じて、水環境へのマイクロプラスチック流入を防止し、状況を改善する方法について議論します。
IGES 適応と水環境領域 研究員
稲村 由佳子
IGES 適応と水環境領域 研究員
国連大学サステイナビリティ高等研究所よりサステイナビリティ学の博士号取得後に、東洋大学国際共生社会研究センターにて研究助手として勤務。2021年6月からIGESの適応と水環境領域の研究員として水環境の研究に従事し、アジア水環境パートナーシップ(WEPA)プログラムの事務局メンバーとして活動している。これまでに研究員やアドミニストレーターとして、カリフォルニア大学デービス校やコーネル大学にて水関連の研究プロジェクト、外務省にてODAプロジェクト、JICA研究所、OECD、UNU-IASにて水・農業関連の研究や出版活動に従事した経験を有する。
フランス持続可能な開発研究所(IRD)/地中海海洋学研究所(MIO) 研究員 ホーチミン工科大学
エミリー・ストラディ
フランス持続可能な開発研究所(IRD)/地中海海洋学研究所(MIO)研究員 ホーチミン工科大学
ストラディ博士は、マルセイユにあるフランス持続可能な開発研究所(IRD)及び地中海海洋学研究所(MIO)に研究員として勤務し、2015年からベトナムのホーチミン工科大学(HCMUT)とも提携し、ベトナムの水環境におけるプラスチック汚染の研究を主導している。地球化学と生態毒性学の博士号取得後に、都市-河川-海岸の連続体と水、堆積物、大気、生物相などの間でのマクロプラスチックとマイクロプラスチックのアセスメント、流束推定、移動に焦点を当てた研究に従事。2019年より、ベトナム人研究者が構成する観測ネットワークを指導し、ベトナムの湖沼、貯水池、河川、河口、ラグーン、湾におけるマイクロプラスチック濃度を四半期ごとに国家レベルで評価するCOMPOSEプロジェクトを主導している。
IGES 適応と水環境領域 副ディレクター(水・衛生分野主任研究員)
ファム・ゴック・バオ
IGES 適応と水環境領域 副ディレクター(水・衛生分野主任研究員)
東京大学にて環境工学と経営学の分野で博士号を取得した後、15年以上にわたり、水供給・衛生・持続可能な消費と生産・資源保全とリサイクル・海洋プラスチック汚染に関するアジアの政策研究やキャパシティビルディングのプロジェクトの実施、管理、指導に従事。現在、IGESの適応と水環境領域の副ディレクターとして、JICA、UNEP、UNESCAP、日本の環境省など、さまざまな国際開発パートナーやドナー機関から資金提供を受けた多くの国際プロジェクトを主導している。
バンドン工科大学環境工学部 大学院プログラム長
エメンダ・センベリング
バンドン工科大学環境工学部 大学院プログラム長
現在、バンドン工科大学の環境工学部の大学院プログラム長として教鞭をとる。固形廃棄物、有害廃棄物、プラスチック廃棄物分野の専門家として、国際的な研究機関やネットワークが資金提供をするプラスチックに関する複数のプロジェクトの主任研究員として研究活動を行い、日本、英国、タイ、ベトナム、オランダとの国際共同研究にも携わっている。アジア工科大学で都市環境マネジメントの博士号を取得。
ミシガン大学 気候・宇宙科学のフレデリック・バートマンカレッジ教授
クリス・ルフ
ミシガン大学 気候・宇宙科学のフレデリック・バートマンカレッジ教授
リード・カレッジで物理学の学士号を取得後、マサチューセッツ大学で電子・コンピュータ工学の博士号を取得。現在、ミシガン大学の気候・宇宙科学のフレデリック・バートマンカレッジ教授を務める。これまでに、インテル社、ヒューズ・エアクラフト/スペース・アンド・コミュニケーション・グループ、NASAジェット推進研究所、ペンシルバニア州立大学で勤務をし、リモートセンシング手法、大気・海洋学的応用、宇宙用センサー技術の開発などの研究を行ってきた。NASAのサイクロン全球航法衛星システム(CYGNSS)ミッションの主任研究員を務めている。
国連アジア太平洋経済社会委員会 環境開発部 循環経済・持続可能な都市開発課 経済専門官
ジャネット・セイラム
国連アジア太平洋経済社会委員会 環境開発部 循環経済・持続可能な都市開発課 経済専門官
国連職員として、過去15年間、持続可能な資源管理を中心に、環境の持続可能性について取り組み、現在は、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)の経済専門官として循環経済・持続可能な都市開発課に所属。日本政府が支援する「クロージング・ザ・ループ」プログラムに携わり、プラスチック汚染計算機とリモートセンシングを用いての東南アジア都市のプラスチック汚染監視を行い、プラスチック漏出を防ぐための都市行動計画の策定を支援している。過去には、科学政策のインターフェース(国際資源パネル)、国の政策開発、民間企業の戦略、教育、消費者向けのプログラムを通した持続可能な消費と生産や循環経済の解決に取り組み、アジア循環経済リーダーシップアカデミーや、使い捨てプラスチックや炭素集約型製品の代替品を開発する起業家を対象としたスタートアップコンテスト「アジア太平洋低炭素ライフスタイル・チャレンジ」を設立した経験がある。プラスチック汚染へのリモートセンシング利用で興味がある点は、自然界のデジタルツインを構築して、ステークホルダーが協力して汚染を防ぐことである。オーストラリアのニューサウスウェールズ大学で環境工学の修士号を取得し、現在シドニー大学で統合的持続可能性に関する研究で博士課程プログラムに在籍。
IGES 持続可能な消費と生産領域 IGES-UNEP 環境技術連携センター(CCET)研究員
アミラ・アベナヤカ
IGES 持続可能な消費と生産領域 IGES-UNEP 環境技術連携センター(CCET)研究員
海洋プラスチックごみとライフサイクルをアセスメントする研究者として、陸上での海洋プラスチックごみのアセスメント、水環境におけるマイクロプラスチック、プラスチックおよびプラスチック関連製品のライフサイクルアセスメントを研究対象としている。IGES-CCETに勤務する前は、一般社団法人ピリカにてリサーチ・エンジニアとして勤務し、ASEAN地域におけるマイクロプラスチック汚染の評価を行った。水や廃水関連の環境におけるマイクロプラスチックに関連した論文を執筆している。
インドネシアプラスチックリサイクル協会 副会長
ジャスティン・ウィガンダ
インドネシアプラスチックリサイクル協会 副会長