日本には、大学、研究機関等の研究活動を支援する「環境研究総合推進費」という制度があり、独立行政法人環境再生保全機構(ERCA)が資金配分しています。この制度により、気候変動問題への対応、循環型社会の実現、自然環境との共生等、環境分野のほぼ全域にわたる研究開発を推進しています。また、人類が直面する気候危機の解決には、将来世代の問題意識や想いを支えることが重要であるため、ERCAは推進費研究で若手研究者の育成にも力を入れています。
本セッションでは、推進費研究の中から、若手研究者(40歳以下)が実施している気候変動、SDGsの解決に資する3つの研究を取り上げます。1つ目は、2050年の脱炭素の実現に向けた道筋を技術、経済、社会的実現可能性という観点から革新的な統合評価モデルで評価し、実現可能性を高めるライフスタイル変革や環境政策を提示する研究。2つ目は、次世代エネルギーとして期待されるアンモニアについて、海抜0m以下の砂漠の太陽エネルギーを利用し、海水淡水化・発電・アンモニア(肥料/エネルギーキャリア)合成を同時に行う革新的なプロセスを提案する研究。3つ目は、取り組みの一層の拡大が求められているSDGsについて、取り組みの推進が不可欠である地方公共団体の「ローカルSDGs」の作成を支援する独創的な研究。これらの研究を通じて将来を担う若手研究者が気候変動、SDGsの問題解決について提言します。
本セッションは独立行政法人環境再生保全機構(ERCA)の協力により開催しています。
独立行政法人環境再生保全機構(ERCA): https://www.erca.go.jp/
環境再生保全機構理事(環境研究総合推進等担当)
川上 毅
環境再生保全機構理事(環境研究総合推進等担当)
1989年環境庁(当時)入庁。環境省では環境白書の執筆や循環型社会形成推進基本法の制定等を担当。地方公共団体(滋賀県自然環境保全課)、国際機関(OECD環境局)、教育機関(上智智大学地球環境学研究科)、政府系企業(中間貯蔵・環境安全事業株式会社管理部)など職務経験は幅広い。2019年~2021年はIGES気候変動統合チーム・スペシャル・ディレクターとして「ネットゼロという世界 2050年日本(試案)」プロジェクトを進めた。
東京大学 名誉教授
安岡 善文
東京大学 名誉教授
1975年東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻博士課程修了、工学博士。1975年より国立環境研究所総合解析部総合評価研究室長などを経て、1998年同地球環境研究センター総括研究管理官。1998-2008年東京大学生産技術研究所教授。2007-2011年国立環境研究所理事。2011-2015年情報・システム研究機構監事(非常勤)、2016-2018年千葉大学環境リモートセンシング研究センター長(非常勤)。現在、科学技術振興機構(JST)研究主幹。主たる研究分野は環境リモートセンシング。
京都大学大学院工学研究科 准教授
藤森 真一郎
京都大学大学院工学研究科 准教授
藤森真一郎は京都大学大学院工学研究科の准教授で、国立環境研究所、IIASAの客員研究者を兼任しています。主な研究分野は、グローバル、国別の気候変動緩和策のための統合評価モデル開発及びそれを用いた政策分析で、気候影響、適応策の評価も行っています。将来のGHG排出量、エネルギー、土地利用のシナリオ作成を行い、その成果は気候研究分野で広く利用されている。また、2019、2020年のクラリベート社の高被引用論文著者に選出された。
法政大学デザイン工学部建築学科 教授
川久保 俊
法政大学デザイン工学部建築学科 教授
2013年に慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程を修了。博士(工学)。同年4月より法政大学デザイン工学部建築学科助教。その後、専任講師、准教授等を経て、2021年4月より教授(現職)。専門は建築/都市のサステナビリティアセスメント。近年は、ローカルSDGs推進による地域課題の解決に関する研究を進めている。主な受賞歴:文部科学大臣表彰若手科学者賞、グリーン購入大賞・環境大臣賞など。
京都大学 大学院 エネルギー科学研究科/白眉センター 特定助教
小川 敬也
京都大学 大学院 エネルギー科学研究科/白眉センター 特定助教
2009年東京大学学士(工学)、2011年東京大学大学院修士(工学)、2013年東京工業大学大学院修士(技術経営)、2014年東京工業大学大学院博士(理学)。東京工業大学博士研究員、マサチューセッツ工科大学博士研究員、スタンフォード大学博士研究員を経て、2018年より現職。再生可能エネルギーで水・電気・アンモニアを効率的に同時生産するシステムの構築を研究。