要約
本セッションでは、IGESが新たに発表した報告書『IGES 1.5℃ロードマップ:日本の排出削減目標の野心度引き上げと豊かな社会を両立するためのアクションプラン』を著者4名が解説し、メディアやファイナンスの役割を交えながら議論を深めました。
田村堅太郎は、この報告書が排出削減対策のみならず、社会変容を促すロードマップとして、2024年に始まるエネルギー基本計画の策定に一石を投じるものであることを強調しました。
岩田生は、1.5℃ロードマップに沿った企業戦略が事業の道標となるよう日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)加盟企業の声を反映して作成したと述べました。
栗山昭久は、脱炭素技術の導入に加えて、デジタル化による社会変容を通じて日本の温室効果ガス排出をより早く大幅に削減するために必要な1.5℃ロードマップの研究成果について報告しました。
田中勇伍は、1.5℃ロードマップからムーブメントへとフォロワーを増やして社会変容を促し、気候変動対策のみならず社会全体のウェルビーイングを高める必要があることを示しました。
堅達京子氏は、1.5℃ロードマップは科学的根拠に基づいており、これを市民にわかりやすく伝えていく必要があると指摘し、その一環としてNHKの動画「1.5℃の約束」を紹介しました。 森下麻衣子は、1.5℃ロードマップは目標達成に必要な各産業分野の排出経路を定量的に示しており、産業界が金融機関から気候変動資金を調達する際に役立つ指標になると述べました。
主要メッセージ- 本報告書はパリ協定の1.5℃目標を達成するための排出削減対策のみならず、企業戦略の道標となり社会変容を促す行動指針となるものである。
- エネルギーの需要と供給における脱炭素技術の導入に加えて、デジタル化による社会経済の変化や省エネ化・電化・水素化を多面的に検討することにより、日本の温室効果ガス排出量をより早期に、より大幅に削減できる可能性がある。
- メディアが1.5℃目標達成の普及啓発に果たす役割は重要であり、市民にもわかりやすい説明や用語によって伝えていく必要がある。1.5℃目標と整合する産業分野毎の定量的なロードマップは、産業界が金融機関から気候変動資金を調達する際に役立つ。