Session
危機への打開策:究極の政策・計画・行動とは
持続可能性を軸にしたランドスケープ・シースケープ管理を目指して:地方自治体が担う重要な役割とは
SATOYAMAイニシアチブは、生産活動が行われているランドスケープ及びシースケープの持続可能な管理の推進と自然・文化遺産や資源を守りつつ、活用していくことを目的に立ち上げられた。これまでに世界中の多くの場所で持続可能性とレジリエンス向上に向けた社会変容のきっかけを与えている。SATOYAMAイニシアチブの取組みはグローバルから現場活動に至るまであらゆるレベルで効果を発現しつつあるが、変容は常に地域により近いレベルの行動から始まる。コミュニティや社会が直面する具体的な課題の解決には、現場の政策や行動が必要であり、これは同時に持続可能な開発目標(SDGs)14(水中の生命)と15(陸上の生命)を含む複数のSDGs達成に貢献するものである。
「社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ」(SEPLS)という用語は、生物多様性と人々の生産活動が共存し、生物の生息地と土地利用および海域利用が調和のとれたモザイク状に分布している場所を示した言葉で、SEPLSは、持続可能な管理により、水、生物多様性、食糧、健康などの、地域のあらゆるニーズを満たすことができる。また、国家レベルの保全のほか、SDGなどの開発の優先事項やグローバルな目標にも貢献することができる。しかし、今日多くのSEPLSは深刻な危機に直面している。一方で、これらの危機に対応し、前向きな変化を引き起こし主流化を進めていくためのさまざまな活動が実施されている。
本セッションでは、知識を共有し、さらなる行動を促進するという目標を達成するための継続的な取組みを紹介する。まず、SATOYAMAイニシアチブと国際的なパートナーシップであるIPSIについて紹介し、SEPLSの持続可能な管理を促進する活動について紹介する。続いて、地方自治体のIPSIメンバーから活動紹介を行ったあと、他の主体のIPSIメンバーより、それぞれの視点から見た地方自治体の役割の重要性について発表をいただく。その後のパネルディスカッションでは、SEPLS管理手法のさらなる発展に向けてのニーズを把握し、既存の課題を克服する方法を模索することに焦点を当てて議論を行う。
開会挨拶
武内 和彦
IGES理事長/東京大学サステイナビリティ学連携研究機構長・特任教授/UNU-IAS上級客員教授
SSS
高石 豊
兵庫県阪神北県民局県民交流室環境参事
SSS
ジェラルド・ジェトニー
マレーシア・サバ州自然資源局シニアジオロジスト
SSS
マルサル・グスマオ
東ティモール国立大学気候変動生物多様性センター副所長・講師/東ティモール商工環省 生物多様性条約名古屋議定書の国家フォーカルポイント
SSS
ピア・セティ
エネルギー資源研究所(TERI)生物多様性と生態系サービスセンターフェロー/エリアコーディネーター
モデレーター
塚本 直也
UNU-IASプロジェクトディレクター
SSS
高石 豊
兵庫県阪神北県民局県民交流室環境参事
1987年兵庫県入庁。環境技術職として水質汚濁防止法や廃棄物処理法に基づく工場排水維持管理、産業廃棄物処理業者の適正処理などの行政指導を担当する。 兵庫県環境研究センターでPCBや農薬などの有害化学物質の環境負荷、汚染メカニズムの研究に従事した経験を持つ。兵庫県大気常時監視センター長、火力発電所などのアセスメントを行う環境影響評価室長を経て、2017年4月から現職。
SSS
ジェラルド・ジェトニー
マレーシア・サバ州自然資源局シニアジオロジスト
サバ州の生物多様性保全戦略と行動計画の諮問委員会委員長、EUプログラム「サバ州の持続可能な森林管理とコミュニティ開発による気候変動対策」運営委員会の委員長、2013年から2018年までのUNDP-GEFプロジェクト、サバ州の多目的森林景観における生物多様性保全プロジェクト委員会委員長を務める 。また、サバ州における持続可能な開発および生物多様性に関する複数の他の多年度プロジェクトを管理している。さらに、生物多様性条約(CBD)やラムサール条約、ユネスコ「人間と生物圏」(MAB)計画のサバ州のフォーカルポイントでもある。
SSS
マルサル・グスマオ
東ティモール国立大学気候変動生物多様性センター副所長・講師/東ティモール商工環省 生物多様性条約名古屋議定書の国家フォーカルポイント
西オーストラリア大学で農業の博士号を取得。東ティモール国立大学農学部講師を経て、2012年に生物多様性条約名古屋議定書の国家フォーカルポイントの指名を受ける。現在は気候変動生物多様性センター(UNTL)の副所長を務める。研究分野は旱魃・洪水等の極端気象への作物の適応、アグロフォレストリー、土壌・水保全等。
SSS
ピア・セティ
エネルギー資源研究所(TERI)生物多様性と生態系サービスセンターフェロー/エリアコーディネーター
2010年にイリノイ大学で生態学の博士号を取得し、ヒマラヤ東部の森林における森林動態の破壊の影響について研究。人間による劣化が生態系に及ぼす影響を広範に研究しており、世界銀行、SIDA、JICA、GEF、MOEF&CC等、生物多様性、土地利用、林業に関する課題のチームリーダーも務める。Conservation Biologyを含む国際的なインパクトの高いジャーナルに幅広く論文を発表し、コミュニティによる森林管理に関する書籍(共著)がある。米国のコンサベーション・リーダーシップ・プログラム、英国の若手環境管理者向けシェービング・プログラムの卒業生でもある。
モデレーター
塚本 直也
UNU-IASプロジェクトディレクター
1985年東京大学理学部物理学科卒、2005年Johns Hopkins大学環境科学修士。1985年環境庁に入庁。大気汚染、水質汚濁、地域環境管理、地球環境保全など幅広く環境行政に携わる。OECD日本政府代表部、世界銀行本部(ワシントンDC)勤務を経て、2005年から環境省研究調査室長、IPCC/AR4日本政府代表、UNFCCC 適応基金理事会メンバー(理事及び副議長)。2008年環境リスク評価室長: 10万人の子供を妊娠期間から12歳まで追跡して化学物質がこどもの健康へ与える影響を解明する「エコチル調査」を立上げ。2010年国際連携課長、UNFCCC 適応委員会のメンバー。2013年産業廃棄物課長。2014年IGES統括研究プログラムマネージャー/ 事務局長。2016年7月より現職。