このセッションは、ISAP2022の全体テーマである気候変動と生物多様性について、これら二つの地球的課題の統合的な解決策について、さらに、どうすれば科学、政策、行動のインターフェースを強めていけるのかを議論します。
このセッションは二つのコンポーネントから構成されます。まず、本セッションの前半では、アジアの研究機関の代表をお呼びし、トランジションの時代にあって、大学や研究機関が先端知・実践知・経験知を駆使して、チェンジ・エージェントとしてどのような役割を果たしていくのかを議論します。
また、1972年にローマクラブが『成長の限界』を発表してから50年にあたる2022年、ローマクラブの新たなレポート『Earth for All: A Survival Guide for Humanity』が9月に発表されました。本セッションの後半では、IGESによる日本語翻訳版『Earth for All 万人のための地球『成長の限界』から50年 ローマクラブ新レポート』*の出版を記念して、同レポートについていち早く紹介いたします。
このレポートでは、新たなシステムダイナミクスモデルによる「小出し手遅れ(Too Little Too Late)」、「大きな飛躍(Giant Leap)」の2つのシナリオをもとに、2030年、そして2050年以降の世界の姿を描き出し、貧困、不平等、女性のエンパワメント、食料、エネルギーの5つの分野で今すぐに取り組むべき課題、そして具体的な解決策を明らかにするとともに、背景にある経済社会システムそのものの「劇的な方向転換」を促しています。深刻化する気候変動や生物多様性の損失、そしてウクライナにおける戦争に伴うエネルギー・食料危機など、地球規模の様々な脅威に直面する私たちが、持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みを加速させ、その先の持続可能な未来に向けた歩みを確実なものにするための有益な指針を与えてくれます。
本セッションでは、こうした二つのコンポーネントの議論を通じて、ISAPが第一回から継続的に取り上げてきた「持続可能なアジア太平洋」にて、これまでとは決定的に異なる10年に向けて大胆な一歩を踏み出すにはどうしたらよいかを議論します。
* 会場に来られた方々には、『Earth for All 万人のための地球「成長の限界」から50年 ローマクラブ新レポート』(丸善出版)を先行販売いたします。 定価2,640円(税込)のところ、 当日ISAP会場での販売のみ特別価格2,500円(税込)にてご提供します。(現金販売のみ/クレジットカード・電子マネーは対応不可)
IGES 所長
高橋 康夫
IGES 所長
群馬県出身。東京大学工学系大学院修士課程修了(都市工学専攻)。 1983年環境庁(現環境省)入庁。 地球温暖化対策課長、福島環境再生本部長、大臣官房審議官(福島中間貯蔵施設担当)、水・大気環境局長、地球環境審議官などを歴任。この間、 OECD日本政府代表部書記官(在パリ、環境政策委員会担当 1991年~94年)、国連大学高等研究所客員研究員(2000年)。2019年7月から環境省参与、 2020年1月からIGES特別政策アドバイザー。2020年11月より現職。
総合地球環境学研究所 副所長
谷口 真人
総合地球環境学研究所 副所長
水文学者、総合地球環境学研究所 副所長。日本学術会議連携会員、フューチャー・アース日本委員会委員、Water-Energy-Food Nexus KANの運営委員。UNESCO-GRAPHIC、アジア大都市の地下水、水・エネルギー・食料ネクサス、ベルモント・フォーラム国際共同研究「持続可能な都市化に向けた国際イニシアチブ(SUGI):食料・エネルギー・水ネクサス」、持続可能な開発目標ネクサスに基づくカーボンニュートラルなど、多くの研究プロジェクトで主任・共同主任研究者を務めている。世界各地の水関連プロジェクトに携わり、"From Headwaters to the Ocean"、"The Dilemma of Boundaries"、 "Groundwater as a Key for Adaptation to the Changing Climate and Society" など180本以上の論文を執筆・共著、8冊の書籍を編集・共編。
インド・エネルギー資源研究所(TERI) 所長
ヴィバ・ダワン
インド・エネルギー資源研究所(TERI) 所長
1985年よりインドの代表的な研究機関であるエネルギー資源研究所(TERI)にて研究に従事し、現在所長を務める。国内外での研究活動や政策立案に積極的に取り組むとともに、TERIのマイクロプロパゲーション・テクノロジーパークの設立に尽力。先進バイオ燃料の分野では、先進バイオ燃料とバイオコモディティの統合生産に関するDBT-TERIセンターの活動を主導している。現在、ミシガン州立大学Consul General of South Asia Partnership非常勤教授も務めている。NRI AchieversによるIndian Women Achievers Sammaan 2017等を受賞。
韓国環境研究所(KEI) 理事長
イ・チャンフン
韓国環境研究所(KEI) 理事長
ブレーメン大学で経済学の博士号を取得後、環境政策における代表的な公的シンクタンクである韓国環境研究所(KEI)に入所。主な研究分野は、環境税と環境融資、環境政策の費用便益分析、エネルギー政策の環境影響評価など。また、様々な国の環境・エネルギー計画プロセスにも参画している。特に、韓国の第4次国家総合環境計画(2016~2035)策定においては中心的役割を果たした。KEIの様々な管理職を経て、現在、理事長を務める。
中部大学卓越教授/ローマクラブ常任委員・日本支部長
林 良嗣
中部大学卓越教授/ローマクラブ常任委員・日本支部長
Transport Policy(Elsevier)共同編集長、世界交通学会会長(2013-19)など歴任。経済発展と都市化・モータリゼーションのメカニズム、低炭素交通、都市のクオリティストック形成とスマートシュリンク、交通・都市のQOL評価の国際研究リーダーを務めてきた。著書に「Balancing Nature and Civilization」、「Intercity Transport and Climate Change」(以上、Springer)、「Transportation amid Pandemics」(Elsevier)など。「持続性学」、「レジリエンスと地域創生」(以上、明石書店)
ローマクラブ 共同会長
サンドリン・ディクソン・デクレーブ
ローマクラブ 共同会長
気候、エネルギー、持続可能な開発、持続可能な金融、複雑系に関して、欧州、そして世界をリードする思想家。ローマクラブの共同会長を務める傍ら、講演活動、ファシリテーション、助言といった活動も行っている。現在、欧州委員会でExpert Group on Economic and Societal Impact of Research & Innovation (ESIR)の議長を務め、Climate KIC、Laudes Foundation、Imperial College Leonardo Centre、EDP、BMW、UCBなどの理事会や顧問委員会のメンバー、Cambridge Institute for Sustainability Leadership(CISL)のシニアアソシエートおよび教員としても活動している。 また、エネルギー移行委員会(ETC)およびウェルビーイング経済同盟(WeAll)の大使、世界芸術科学アカデミーのフェローでもある。2017年、Women Enablers Change Agent Network(WECAN)を共同設立。最近では、ローマクラブ報告書「Earth for All: A survival guide for humanity」(邦題:「万人のための地球」)を共著し出版した。
IGES 理事長
武内 和彦
IGES 理事長
1974年東京大学理学部地理学科卒業、1976年同大学院農学系研究科修士課程修了。農学博士。東京大学アジア生物資源環境研究センター教授などを経て、1997年より2012年まで同大学院農学生命科学研究科教授、2008年より2016年6月まで国連大学副学長・上級副学長。2012年4月より東京大学サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)機構長、教授/特任教授。2017年7月より公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)理事長。2019年4月より東京大学未来ビジョン研究センター特任教授。中央環境審議会会長、Sustainability Science誌(Springer)編集長、Distinguished Chair, Wangari Maathai Institute for Peace and Environmental Studies, University of Nairobi等を兼務。
専門は、緑地環境学、地域生態学、サステイナビリティ学。