気候変動の進行は、都市の水環境に多面的な影響を及ぼしています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書では、都市・集落・主要インフラに対する気候変動影響とリスクが評価されており、特に沿岸部や低地の都市・集落では、海面上昇や沿岸域の気候ハザードにより、今世紀中に深刻な影響を受ける可能性が示されています。また、水資源をめぐっては、降水や流出の変化により水供給の不確実性が高まる一方、都市への人口流入や経済活動の変化に伴って水需要も変動しており、水環境をめぐる課題は一層複雑化しています。
さらに、温暖化の進行に伴い、海洋や雪氷圏を含む気候システムの変化が、海面上昇、降水パターンの変化、極端現象を通じて都市の災害リスクを高める可能性があります。こうした影響は、水不足、洪水、都市型豪雨による浸水被害など、地域ごとの社会・経済条件や適応能力に応じてさまざまな形で現れます。
こうした動向を踏まえ、本セッションでは「気候変動と水環境」を切り口に、都市のレジリエンスを支える科学的知見とその活用可能性を議論します。3名の専門家による発表とパネルディスカッションを通じて、将来の水資源や都市型水害リスクの予測・評価を、 アジア太平洋の都市・地域における適応の計画・実装、リスクに基づく意思決定、持続可能な都市づくりにどうつなげるかを検討し、科学、政策、地域実践を結びつける知見を共有します。
プログラム
司会
相澤 絵美
環境再生保全機構(ERCA)環境研究総合推進部研究推進課長
開会挨拶
東條 純士
環境再生保全機構(ERCA)・上席審議役

モデレーター
原田 晃
環境再生保全機構(ERCA)・環境研究総合推進費プログラムオフィサー
環境研究総合推進費プログラムオフィサー。北海道大学大学院水産学研究科修士課程修了、水産学博士。産業技術総合研究所環境管理技術研究部門長、東北センター所長、東京都立産業技術研究センター理事等を歴任。専門は地球化学・海洋化学。海洋環境中の天然放射性同位体や炭素循環の研究、海洋利用に関する環境影響評価手法の開発、国際標準化活動等に従事。

登壇者
河野 なつ美
埼玉県環境科学国際センター温暖化対策担当・主任
河野博士は埼玉県環境科学国際センターの研究者。東京工業大学博士(工学)。都市気象学を専門とし、都市温暖化や都市型集中豪雨、光化学オキシダントの数値シミュレーションを実施している。現在は気候変動に関する研究プロジェクトに参画し、都市豪雨予測、農作物影響、脱炭素社会の環境予測を研究。高解像度予測に基づく地方自治体向け適応策の提案を目指し、国内外の機関と連携して地域社会のレジリエンス向上に貢献している。
https://www.pref.saitama.lg.jp/cess/torikumi/kenkyuin-list/kawano-natumi.html

登壇者
花崎 直太
国立環境研究所 気候変動適応センター 気候変動影響評価研究室・室長
花崎直太氏は、国立環境研究所気候変動適応センターの気候変動影響評価研究室長である。花崎氏は東京大学で土木工学の学士、修士、博士の学位を取得した。研究分野は水文学および水資源工学であり、特に、灌漑、取水、貯水池の運用といった人間の水利用や管理を組み込んだ、物理過程に基づく全球水文学モデルの開発に取り組んでいる。同モデルを、気候変動や持続可能な開発を含む様々な地球規模の水問題に応用している。査読付き研究論文を180編以上、単独または共著で執筆している。クラリベイトの「Highly Cited Researcher 2024-2025」に選出された。また、IPCC第7次評価報告書第16章(水)の主執筆者や学術誌『Environmental Research Letters』および『Environmental Research: Water』の編集委員も務めている。

登壇者
平林 由希子
芝浦工業大学工学部土木工学課程都市・環境コース担当・教授
水文学・気候変動影響評価を専門とし、20年以上にわたり、気候変動による地球規模の水循環、洪水・水資源への影響予測と適応に関する研究に従事。現在、芝浦工業大学工学部教授。これまで山梨大学大学院医学工学総合研究部助手、東京大学大学院工学系研究科准教授等を歴任。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書」主執筆者。日本工学アカデミー会員、日本学術会議連携会員。水文・水資源学会理事、土木学会理事を歴任。芝浦工業大学工学部卒、東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、博士(工学)。2009年国際水文科学会Tison Award、2021年第17回日本学術振興会賞受賞。
https://www.db.shibaura-it.ac.jp/~hirabayashi/hyukiko/indexJ.html

独立行政法人環境再生保全機構(ERCA):https://www.erca.go.jp/
