録画映像
要約
本セッションでは、気候変動、生物多様性の損失、汚染、SDGsの遅れを別々に扱うのではなく、ひとつの取り組みから複数のよい変化を生み出す「シナジー」を地域でどのように実践し、アジア太平洋や世界へ広げるかを議論しました。
アルミダ・S・アリシャバナ氏は、2026年7月に採択された「シナジー推進に関する地域行動プログラム」を紹介し、気候変動、生物多様性とネイチャーポジティブな開発、汚染と循環経済、都市とレジリエンスという4つの柱を、ガバナンス、資金、データで支える必要性を示しました。国際的な合意をつくって終わりにせず、地方自治体が使える形に変えることが重要であると呼びかけました。
エリック・ザスマンは、現在のままではSDGsの達成が2060年頃まで遅れかねないとの問題意識を示した上で、50名を超える執筆者がまとめた「アジア太平洋シナジーレポート」を取り上げ、健康を中心に据えた気候行動、生物多様性保全とネイチャーポジティブ、循環経済、実装基盤としての都市という4つの入口(エントリーポイント)を説明しました。36の詳細事例と147の地域事例を、政策、投資、データ、制度につなぐことで、限られた資源からより多くの成果を生み出せると強調しました。
ジャン・ケジュン氏は、気候危機がすでに人々の生命と暮らしを脅かしており、今後5年間の行動が決定的に重要であると述べました。太陽光発電や電動モビリティを各国の状況にあわせて広げ、単なる機器輸出ではなく、技術移転、現地生産、地域産業と雇用の育成につなげる国別の実装戦略を提案しました。
高田実氏は、SDGsは理想論ではなく、193カ国が理想と現実、短期と長期を調整してつくった実践的な共通目標であると説明しました。日本には、自治体、企業、市民社会、研究機関が一緒になり、現実の制約の中でもSDGsに向けた取り組みを丁寧に前へ進めてきた経験があるため、その知恵を世界と共有してほしいと期待を寄せました。
上西琴子氏は、脱炭素、自然共生、資源循環、地域経済、人材育成を、地域の暮らしの中で無理なく結び付ける実践として、北摂里山地域循環共生圏、サステナブルファッション、高校生環境・未来リーダー育成、ひょうご環境未来会議を紹介しました。特に、将来世代を学びの対象だけでなく、政策づくりと地域変革の担い手として迎えることの大切さを伝えました。
討論を通じて、大きな構想だけでなく、地域に合った小さな一歩から始め、経済的・社会的なメリットをわかりやすく示し、部局や組織を越えて人、資金、技術、データをつなぐことが実装の鍵である点を共有しました。また、シナジーは、環境指標だけでは捉えきれない人々のウェルビーイングを具体化する考え方にもなり得ることを確認しました。そして、地域の知恵を丁寧に蓄積して世界へ届け、世界の動きや学びを再び地域へ返す双方向の循環をつくることが、ポスト2030に向けた次の一歩であると締めくくりました。
サマリ―作成者: 藤野 純一(IGES)
基調講演

パネル討論



パネリスト
高田 実
国連事務局経済社会局 森林フォーラム事務局次長 / エネルギー・気候変動チームリーダー
青年海外協力隊員(ガーナ)を経てUNDPアンゴラ事務勤務後、同NY本部開発政策局政策局環境・エネルギー部に従事、同持続可能なエネルギープログラムリーダ-へ経て、潘国連事務事務総長室にて上席エネルギー政策顧問、同事務総長室Sustainable Energy for All NYオフィス代表を歴任。2017年から国連事務局経済社会局にて持続可能な開発部持続可能エネルギー及び気候変動・チームリーダーを務めた後、2023年末より現職。元NY邦人国連職員会会長 (2019-2021)

パネリスト
上西 琴子
兵庫県 環境部長
1992年、環境の技術専門職員として兵庫県庁入庁。2017年農政環境部環境管理局環境影響評価室長、2019年農政環境部水大気課長、2021年農政環境部温暖化対策課長、2022年環境部次長を経て、2026年4月環境部長に就任、現在に至る。
