本セッションでは、IGESが今年20周年を機に上梓する3つのフラグシップ(旗艦)研究報告書を紹介する。中でも「Realising the Transformative Potential of the SDGs」と題する報告書を主に取り上げ、SDGsの変革ポテンシャルに迫る。現在、SDGs実施の進捗を測るデータ及び指標の設定に世界は注力しているが、その決定を待つより前に具体的な行動に移す必要性がある。この報告書は、政府と民間セクターが変革を促す補完的役割を提示し、SDGsが本来の目的を果たすのに欠かせないテクノロジーとファイナンスの重要性にも触れる。
もう二つの報告書は、変革ポテンシャルの鍵となるSDGsの統合的アプローチを扱う。ひとつはSDGsの複雑な相関関係を分析し、それを定量化し可視化したウェブツールの開発についての報告書であり、もうひとつは統合的アプローチのガバナンスを強化する方法についての報告書である。
IGES 戦略マネージメントオフィス
リサーチ・パブリケーション ディレクター
マーク・エルダー
IGES 戦略マネージメントオフィス リサーチ・パブリケーション ディレクター
環境ガバナンス、持続可能なガバナンスをテーマに、持続可能な開発目標(SDGs)、持続可能な開発のためのリオ+20制度的枠組み、越境大気汚染、東アジア地域における環境協力、経済統合、バイオ燃料、地方統治など、多くのプロジェクトをリードしてきた。SDGs分野に関しては、「Scoring the Sustainable Development Goals: Pathways for Asia and the Pacific」を共著。またSustainability誌に「An Optimistic Analysis of the Means of Implementation for Sustainable Development Goals: Thinking about Goals as Means」を寄稿している。
ハーバード大学政治学博士号取得。ミシガン州立大学で政治経済学、国際関係学の准教授を歴任した後、2017年7月より現職。
IGES バンコク地域センター
シニアアドバイザー
ピーター・キング
IGES バンコク地域センター シニアアドバイザー
オーストラリア・ヴィクトリア州で初の保全省における土壌研究コーディネーターに就任後ハワイ東西センターの環境・政策研究所を経てコンサルタント会社を設立。クライアントでもあったアジア開発銀行(ADB)に1991年から環境専門家として勤務し、50件以上のローン及びTAプロジェクトを担当するADB屈指の自然資源管理専門家(グリーン専門家)としての地位を確立した。2005年にADBを退職し、現職。
アジア環境法遵守執行ネットワーク事務局を率いる他、USAID Adaptアジア太平洋プロジェクトの適応プロジェクト準備とファイナンスチームのリーダーを務める。気候変動アジアコーディネーショングループメンバー。
1998年オーストラリア・マードック大学大学院(環境科学)修了。40年以上にわたる熱心な環境活動家である。
IGES 戦略的定量分析センター
リサーチリーダー
周 新
IGES 戦略的定量分析センター リサーチリーダー
現在、IGESの戦略的定量分析センターを統括しながら、持続可能な開発目標(SDGs)の各目標の相関の分析と可視化ツールの開発と応用、緑の投資の雇用効果の評価、および水・エネルギーネクサス(連環)などの研究に従事している。近年、インドネシアにおけるNDCの労働市場への影響の定量分析、日本カーボンプライシングと国境税調整における産業競争力とカーボン・リーケージへの影響のアセスメント、東北アジアにおける環境財・サービス部門の雇用効果の評価、2050年低炭素ナビツールの開発などに従事した。2007年名古屋大学環境学研究科修了、環境学博士。1994年より中国環境保護部・環境経済政策研究センター(PRCEE)に勤務、政策研究ディレクターとして、環境に関する国の政策立案を支える多くの政策研究をリードしていた。中国政府への学術的および社会的貢献が評価され国家科学賞を複数回受賞している。
IGES 持続可能性ガバナンスセンター
リサーチリーダー
エリック・ザスマン
IGES 持続可能性ガバナンスセンター リサーチリーダー
IGESの持続可能性ガバナンスセンターのリサーチリーダー。テキサス大学オースティン校公共政策およびアジア研究における修士号取得、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)政治学博士号取得。過去10年間にわたりアジアにおける環境課題を主な研究対象とし、中国における水不足や大気汚染規制、環境規制分野における研究論文や出版物を多数手がけてきた。中国の黄河管理委員会や環境科学研究アカデミーにも従事。現在は、アジアの開発途上国における気候政策のコベネフィット関連プロジェクトにも関心を向けている。
国立環境研究所(NIES)理事長
コメンテーター
渡辺 知保
国立環境研究所(NIES)理事長
国立研究開発法人国立環境研究所理事長(2017.4月〜)、東京大学名誉教授。専門分野は人類生態学(human ecology)、環境と健康、環境毒性学。保健学博士(東京大学、1991)。著作に『人間の生態学』(共編著、朝倉書店)、『毒性の科学』(共編著,東京大学出版会)、“Sustainability challenges: Elucidating sustainability-health intersections” (共編著、 Current Opinion in Environmental Sustainability 2017、25特集号)など。 Society of Human Ecology副会長(2011〜2017)、日本健康学会理事長(2017〜)などを務める。
エネルギー資源研究所(TERI)
上席フェロー
コメンテーター
アジャイ・シャンカール
エネルギー資源研究所(TERI)上席フェロー
IGES 所長
モデレーター
森 秀行
IGES 所長
京都大学大学院工学部工業化学科修士課程修了。1977年環境庁(現環境省)入庁。アジア開発銀行環境専門官、国連高等難民弁務官、環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課研究調査室長、国連環境計画GEF担当ポートフォリオマネージャーなどを経て、2003年にIGES長期展望・政策統合プロジェクトリーダーに就任。慶応大学大学院政策・メディア研究科特別研究教授(2008年~2010年)。2010年4月より現職。
主著に「低炭素社会をデザインする」(共著、慶応義塾大学出版会)