生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)が本年3月に発表したアジア・オセアニア地域アセスメントは、人々の豊かな暮らしを支える生物多様性と生態系サービスが経済成長や都市化、集約的な農業の拡大により脅かされつつある中、自然共生型の持続可能な生産活動がSDGs達成に向けて鍵になることを指摘した。冒頭でこの成果を紹介した上で、日本の佐渡市、ならびにSATOYAMAイニシアティブによる事例集「持続可能な暮らしと社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ」からインドネシア・ブオール県における持続可能な生産活動の事例を紹介する。最後のパネル討論では、自然共生に向けた統合的ランドスケープアプローチの可能性を模索する。
IGES 理事長
武内 和彦
IGES 理事長
1974年東京大学理学部卒業、1976年同大学院農学系研究科修士課程修了。農学博士。東京大学アジア生物資源環境研究センター教授などを経て、1997年より2012年まで同大学院農学生命科学研究科教授、2008年より2016年6月まで国連大学副学長・上級副学長。2012年4月より東京大学サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)機構長、教授・特任教授。2017年7月より公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)理事長。中央環境審議会会長、日本学術会議副会長、Sustainability Science誌(Springer)編集長などを兼務。
専門は、緑地環境学、地域生態学、サステイナビリティ学。
国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS) SATOYAMAイニシアティブ コーディネーター
田中 英二
国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)
SATOYAMAイニシアティブ コーディネーター
2018年4月に、SATOYAMAイニシアティブコーディネーターとして、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)に着任。その前は、日本国環境省で勤務し、国連環境計画(UNEP)及び国際再生可能エネルギー機関(IRENA)との調整等、特に地球環境問題に関連した環境外交に従事。以前には、対UNEP常駐副代表として、在ケニア日本国大使館で勤務。東京大学大学院修士課程修了(地理学)。
生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES) アジア・オセアニア地域アセスメント技術支援機関(TSU-AP)代表
守分 紀子
生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)
アジア・オセアニア地域アセスメント技術支援機関(TSU-AP)代表
2018年4月より現職。アジア・オセアニア地域の生物多様性及び生態系サービスに関するIPBESアセスメント報告書(2018年3月採択)のとりまとめ支援のほか、成果の普及推進などに携わる。以前は環境省において、生物多様性条約やラムサール条約などの自然環境保全に関する国際協力分野を担当したほか、生物多様性条約事務局及び国連大学サステイナビリティ高等研究所において勤務経験がある。
アデレード大学 グローバルフード&リソースセンター 博士課程在籍
サシャ・アマルザマン
アデレード大学 グローバルフード&リソースセンター 博士課程在籍
2017年よりオーストラリアのアデレード大学のグローバルフード&リソースセンターの博士課程に在籍する生態系サービスのスペシャリスト。2014から2017年までインドネシアのボゴールに拠点を置くワールド・アグロフォレストリー・センター(ICRAF)に勤務。 ICRAFの在任中、Smart Tree-Investと呼ばれる、アジアの森林ベースで気候スマートな適応・緩和事業を共同管理していた。これは、インドネシア、フィリピン、ベトナムの遠隔地における小農のレジリエンスとランドスケープの質を同時に向上させる共同出資スキームの開発を目的としたアクション・リサーチ・プロジェクトであった。オランダのワーゲニンゲン大学(Wageningen University)で環境科学を専攻し、修士号を取得。彼の研究は、主に小農の脆弱性と適応の実践、生態系サービスへの支払いの社会経済的および制度的側面に焦点を当てている。
新潟県 佐渡市産業観光部
農業政策課 生産振興係 係長
西牧 孝行
新潟県 佐渡市産業観光部 農業政策課 生産振興係 係長
2004年に1島1市の市町村合併により佐渡市となってからは主に特区・地域再生やバイオマスエネルギーの普及に取組んだ。2010年度からは農林水産課生物多様性推進室に配属となり、世界農業遺産や朱鷺と暮らす郷を中心とした佐渡米の販売戦略を主に担当。2016年度からは里山振興係長として、主に生物多様性地域戦略の推進に取り組み、2018年度から現職となる。
IGES 自然資源・生態系サービス領域
プログラムディレクター
モデレーター
ヘンリー・スケーブンス
IGES 自然資源・生態系サービス領域 プログラムディレクター
2004年よりIGESに在籍し、現在は自然資源・生態系サービス領域のリーダーを務めている。マッセー大学で開発学修士号、モナシュ大学で政策科学博士号を取得しており、ニュージーランド、オーストラリア、日本の大学で教鞭を持った経験もある。貧困や生活、人権問題を中心に研究の関心を向けており、近年は森林伐採の法的問題や、持続可能で参加型の森林マッピングとモニタリング、REDD+の準備状態、そして包含的フィナンシャルサービスに焦点を当てている。