パリ協定が掲げた脱炭素社会への転換には、これまでの技術や制度の延長線上の取組みでは不十分で、技術革新を促しつつ、経済・社会システムの再構築という難易度の高い課題に向き合う必要がある。脱炭素化に向けて大きく舵を切った国や地域においては、抜本的な構造改革の課題に自治体や企業が真摯に向き合い、地域経済の活性化や競争力の強化を図る試みが数多く見られる。
本セッションでは、先進的な取組みを進める研究機関や企業を招き、脱炭素社会への転換を見据えた挑戦や、企業の事業ポートフォリオの再構築の事例などを学ぶ。また、各主体がより難易度の高い分野での脱炭素化に向き合い、これを地域の持続可能性や企業の競争力に結びつけていくために、それぞれの主体が果たす役割について議論する。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)
第3作業部会(緩和)共同議長
プリヤダァシ・R・シュクラ
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第3作業部会(緩和)共同議長
インド・アーメダバード大学環境エネルギーグローバルセンター主幹教授。インド国内外でエネルギー、環境、開発分野の権威ある委員会のメンバーとして活躍。15の書籍及び多数の論文の共同執筆・編集のほか、エネルギー、環境、気候変動、開発政策・モデリング分野における国際ジャーナル数誌の編集委員も務める。スタンフォード大学より博士号取得。
ヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所 フューチャー・エネルギー・アンド・モビリティ・ストラクチャーズ ディレクター
ステファン・レヒテンベーマー
ヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所 フューチャー・エネルギー・アンド・モビリティ・ストラクチャーズ ディレクター
ヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所にて、地域・国・国際レベルのエネルギーと気候シナリオ分析の応用研究、及び持続可能な低炭素社会に向けたシナリオを担当。エネルギーとGHG排出シナリオ分析について様々な研究を行い、主導してきた。現在はエネルギー集約型素材産業における脱炭素戦略に焦点をあてた持続可能な未来のエネルギーシステムの研究を行っている。フレンスブルグ大学マネジメント国際研究所エネルギーと環境マネジメント博士号、ミュンスター大学地理学、経済学及び政治科学のディプロマを取得。スウェーデン・ルント大学「持続可能な未来のエネルギーシステム」非常勤教授。低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet)のメンバーであり、GHGインベントリ、政策・施策、GHG予測の分野でUNFCCCに専門家登録(Roster of Experts)されている。
エネルギー資源研究所(TERI)
上席フェロー
アジャイ・シャンカール
エネルギー資源研究所(TERI)上席フェロー
DSM株式会社 代表取締役社長
中原 雄司
DSM株式会社 代表取締役社長
東京大学 工学系研究科化学システム工学修士取得。米国コーネル大学 経営大学院(MBA) 修了、ペンシルバニア大学 ウォートン校 エグゼクティブプログラムELP修了。
現在は代表取締役社長としてDSM株式会社の日本業務全般の責任者を務める。現職前は、DSMでオランダやスイスの駐在経験を有する。他にも、日本ダイニーマ株式会社 取締役、日本特殊コーティング株式会社 取締役、カタリスト・ジャパン アドバイザリーボード、G20Y Association アドバイザリーボードを兼務。
DSM入社前は、マッキンゼー・アンド・カンパニー(東京オフィス、シドニーオフィスを経て、2009年末よりパートナー)、日揮株式会社(基本設計部門、ナイジェリア駐在を経て、プロジェクトマネージャー職)にて勤務。
名古屋大学 大学院 環境学研究科 教授
(国際法・環境法)
高村 ゆかり
名古屋大学大学院環境学研究科 教授(国際法・環境法)
1964年生まれ。専門は国際法、環境法。京都大学法学部卒、一橋大学大学院博士後期課程単位取得退学。静岡大学助教授、龍谷大学教授などを経て現職。日本学術会議会員、環境省中央環境審議会委員、再生可能エネルギー固定価格買取制度調達価格等算定委員会委員などを務める。主な編著作等として『気候変動政策のダイナミズム』(新澤秀則との共編著)(2015年)、ʻClimate Change and Small Island Claims in the Pacificʼ, in Ruppel, O.C. et al. eds.,Climate Change: Legal Responses and Global Responsibility Volume I(2013); Chapter Japan in Lord, R. et al. eds., Climate Change Liability(2011).
気候投資基金(CIF)代表
マファルダ・ドゥアルテ
気候投資基金(CIF)代表
83億ドル規模の気候投資基金(Climate Investment Funds; CIF)をトップとして牽引。
彼女のリーダーシップのもと気候投資基金は、気候変動に対するグローバルな取組みを加速させている。代表例として、他に類を見ない規模かつ革新的な技術を生かした再生エネルギーへの投資、70か国以上に亘るプロジェクトから得られる経験や専門知見を共有する取組みなどが挙げられる。また、資本市場から民間資金を動員するための新しい仕組み作りなど戦略的な組織方針立案をも主導している。
また、気候変動に起因する干ばつ、洪水、台風、海面上昇などを被る途上国に対して、当該被害を軽減するためのプロジェクトを幅広い分野(農業、交通インフラ、地域社会など)で推進している。
2014年に気候投資基金のトップに就任する以前には、アフリカ開発銀行と世界銀行にて気候変動関連のプロジェクト管理、様々な組織方針や戦略に関する業務に従事。
IGES 研究顧問
モデレーター
甲斐沼 美紀子
IGES 研究顧問
1977年に国立環境研究所(NIES)に入所し、1990年から、全球的な、また特にアジア太平洋地域の気候安定化のための政策オプションの検討に用いる、アジア太平洋統合評価モデル(AIM)の開発に取り組む。2009年から2014年まで環境省地球環境研究総合推進費戦略研究「アジア低炭素発展プロジェクト」の研究統括を務め、また、2003年から2014年まで北陸先端科学技術大学院大学の客員教授を務めた。最近では、アジアにおける低炭素社会構築、エネルギーシステム、社会的発展に研究の重点を置いている。また、国際ジャーナルや本で論文を発表してきており、主な著作等として、Climate Policy Assessment(2003)、Methodologies for leapfrogging to low carbon and sustainable development in Asia(2017)、Post-2020 Climate Action: Global and Asian Perspectives(2017)等が挙げられる。
これまでの受賞歴として、環境科学会学術賞(2011年)、科学技術への顕著な貢献2010(ナイスステップな研究者)(2010年)、日経地球環境技術大賞(1994年)等がある。同氏はまた、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次及び第5次評価報告書のリードオーサーを務め、現在IPCC 1.5℃特別報告書のリードオーサーを務めている。2016年には、フォーブスジャパン「世界で闘う日本の女性55」に選出された。